超超超超耳袋 参 ――「ディグオンの伝説」コラボスタンプラリー開幕!!
夏休みだった。
俺はANZAIと私鉄がコラボした『ディグオンの伝説』スタンプラリーに参加していた。
参加者は主に、母親に連れられた小学生。親子連れ。キャップ被ったキッズ。水筒ぶら下げた幼児。
俺は一人。
だが、何も問題ない――。
俺は始発で無人のフォトスポットを完全制覇。
スタンプラリー開始時刻から、関連グッズのお菓子、その他、私鉄コラボ限定グッズの購入に余念がなかった。
後は、アーシュの記念缶バッチが毎年当たる、スタンプラリーくじの交換を残すのみである。
今年はお年玉で貯めたお金で、関連グッズのTシャツ。(テンションをあげる為、買ってすぐに着た)
絵柄の違うソフトロングタオル二枚。(暑いので、一枚は首にかけている。ディグ伝のキャラやアイテムをイメージした、おしゃれかわいいカラフルなモノグラム柄)
昼ご飯にコラボカフェでランチも食べたので、なんと、スタンプラリーくじが六回引けるのだ!!
小学生の頃から、通算八回参加している。
Colemanの黒いリュックサックは、缶バッチだらけでほぼ痛バッグ状態だ。
アーシュの缶バッチ、二十三個。
全てが、勲章である。
交換所のお姉さんが笑顔で話しかけてくる。
「もしかして、毎年参加してるの?」
「はい! 恥ずかしながら、今年で八年目です!」
「凄いねー! では、ラリーくじ六回分、良いのが当たりますように♪」
俺はくじを引く。
一回目。アーシュの缶バッチ。
二回目。アーシュの缶バッチ。
被りだが、アーシュなので、むしろ当たり!
三回目。ディグ伝のロゴ缶バッチ。カッコイー!
四回目。またまた、アーシュの絵柄違い缶バッチ。
五回目。SDアーシュの缶バッチ! かっ、かわいい♡ 家に帰ったら、キスしよっと♪
少しも、ハズレではない。
缶バッチが増えただけだ。
俺は最後のくじを引いた。
A賞――。
俺は、息を止めた。
アーシュのSDぬいぐるみが当選した――!
八年目にして、初のA賞である!!
でかい。
想定の三倍でかい。
「良かったね! このぬいぐるみ、最後の一個なのよ♪」
運命である。
俺とアーシュは、やはり導かれている。
缶バッチはリュックに全部付けた。全部で二十八個。これは、八年間の歴史でもあった。
俺は特大ぬいぐるみを抱きしめ、家に帰る為の電車に乗った。
夏休みの清々しい思い出だ。
朝早くから、人混みを避け、オタ活を満喫できたことに、俺はうっとりとしていた。
だから、異変に気がつくことができなかった――。
同じ車両に。及川さん率いる一軍男女四人組が、乗り合わせていたことに――。
全員浴衣。全員と視線が合う。
俺は挨拶するべきか悩んだ。
その時、俺に関係なく四人は黙って目配せしあってから、忍び笑いを始めた。
「ちょ、皆。笑ったら、可哀想だよぉ」
及川さんが言った。
俺は背を向けた。
「え! なに!? 缶バッチ多すぎね? 怖っ!!」
一軍男子の声――。
俺は背中からリュックを下ろし、静かに抱きしめた。
「声、大きいよ……聞こえちゃってるってばぁ」
及川さんが笑いながら言うと、三人は爆笑した。
俺は、静かに次の駅で降りた。
暑い。だが歩けば帰れる。アーシュのかわいいぬいぐるみを抱きしめながら、歩く。
汗が目に入る。
「別に……俺、悪いことしてないし」
誰もいない歩道で言う。
「趣味だし」
暑い。
ちょっとだけ、目が熱い。
そのとき。
隣から、いつもの声。
「誠司、すごいよ」
アーシュだ。
「八年続けられるって、才能だよ」
「でもさ、笑われた」
「でもA賞だよ?」
「……A賞だな」
「しかも最後の一個」
「運命じゃん」
「だよな?」
俺はぬいぐるみを抱きしめる手に力を込めた。
「缶バッチも、宝物でしょ?」
「全部宝物だ」
「じゃあ勝ちだよ」
夕方の空は、やけに明るい。俺は少しだけ背筋を伸ばす。
一軍は浴衣。俺は痛バッグ。
だが。俺はA賞だ――。
俺とアーシュは
~ TRUE LOVE 4EVER ~だから――――
次回
「超超超超耳袋 肆」




