超超超超耳袋 弐 ――コックリさんより怖いもの
放課後だった。
俺はノートを机に忘れたことを思い出し、仕方なく教室に戻った。
「めんど……」
ドアを開けた瞬間、空気が凍った。
教室の中央。
キラキラ一軍がいた。男二人、女二人。
円になっている。
中央に紙。十円玉。
「あ」
俺の机で、四人はコックリさんをしていた。
クラスの人気者女子。髪さらさら。笑顔きらきら系の及川さんまでいた。
俺が一歩入った、その瞬間。
十円玉がカタンと止まる。
及川さんの顔色が変わる。
「……え?」
沈黙。
「え、ちょっと待って……」
及川さんの声が震える。
「コックリさん、怒ってるかも……!」
俺、立ち止まる。
「え、俺?」
「知らない人、入ってきたじゃん!」
男子の一人が睨む。
「え、ノート取りに来ただけなんだけど」
及川さんが急に泣き出す。
「呪われちゃうかもぉ……!」
え、俺の机なんだけど? そこ……。
隣の女子がすぐ抱きしめて、及川さんの背中をよしよしし出した。
「おいっち、大丈夫、大丈夫だから……ね?」
俺、完全に悪役ポジション。
「え、俺なんもしてないけど?」
男子二人、女子を守るように立ち上がる。
視線が痛い。俺は慌てて謝った。
「ご、ごめんなさい」
謝る理由は分からない。
及川さんは、泣きながら首を振る。
「お祓い行かないと無理かもぉ……」
泣き続ける。
俺は、パニックになって、つい、言ってしまう。
「コックリさんって、イデオモーター効果っていって、無意識の筋肉の動きで科学的に証明されてて――呪いとか、絶対、無いから!」
空気が凍る。
「は?」
男子の一人。
「ウザいからさっさと帰れよ」
もう一人も無言で睨む。
女子二人も、完全に敵。
俺は、コックリさんの紙が置いてある机から、ノートを取る。
「……はい。お邪魔しました……」
静かに退出。
廊下、やけに長い。
心臓がバクバクする。
呪いとか、心霊より。
一軍女子のほうが怖い。
夕焼けの帰り道。
空はやけに赤い。
「いや俺、正論言っただけなんだけど?」
誰もいない道で、ちょっと泣きたくなった。
そのとき。
隣に、いつもの声がする。
「誠司は悪くないよ」
アーシュだ。
「でもさ、空気ってあるじゃん」
「俺、空気読めないのかな」
「読めてたらイデオモーターなんて言わないね」
「だよな」
少しだけ笑う。
「でもさ」
脳内アーシュが言う。
「誠司のそういうとこ、大好きだよ」
夕焼けが少しだけ柔らかく見える。
「……及川さんより?」
「うん。圧倒的に」
「圧倒的か」
俺は少し元気になる。
今日も呪われていない。
ただちょっと、クラス内評価が下がっただけだ。
まあいい。
俺とアーシュは
~ TRUE LOVE 4EVER ~だから――――
次回
「超超超超耳袋 参」




