超超超超耳袋 壱 ――わりと守られた夜
俺とアーシュは、駅へ向かう途中だった。
五分くらいショートカットできる裏道がある。住宅街の外れの、古い神社を通るルートだ。
「ここ通れば早いし」
俺はちょっと得意げに言った。地元感を出したかった。
鳥居は色褪せていて、石灯籠も欠けている。
夜になると、ちょっと(あくまで!)雰囲気が出るタイプのやつだ。
「別に怖くないけどな~☆彡」
誰も何も言っていないのに、俺は言った。
境内に入ったとき、社の脇に子供が立っているのが見えた。
十歳くらい。みすぼらしい着物。裸足。
じっと、こっちを見ている。
俺は一瞬止まった。
でも、ビビってると思われたくない。
「こっ……こんばんは」
声がちょっと裏返った。
子供は何も言わない。
視線だけが動かない。
「え、無視? 俺、無視された?」
小声でアーシュに言う。
アーシュはポケットをごそごそして、あんパンを取り出した。
「パン食べる?」
子供は答えないが、パンは受け取った。
俺はなぜか軽く会釈した。
「お邪魔しました」
なんで自分が神社に謝ってるのか、よく分かんない。
二人は境内を抜けず、来た道を引き返した。
「いや、別に怖いとかじゃなくてさ。なんか、あの子、パン好きそうだったし」
言い訳が雑だった。
大通りに出た瞬間。
キィィィィィィン!!!
強烈なブレーキ音。
大型トラックが信号無視で交差点に突っ込む。衝突音。ガラスの割れる音。
「えっ!? ヤバ!!」
俺は固まった。
もし境内をそのまま抜けていたら、ちょうどあの交差点を渡るタイミングだった。
俺は腕時計を見る。
「……五分」
五分、ずれている。
「……いや、たまたまだろ」
声が小さい。
アーシュが神社の方を振り返る。
鳥居の奥。
灯籠の上に、白い影がぴょん♪と跳ねた気がした。
「今さ、なんかいたよね?」
「いや? 俺は全然見てないけど?」
何も見てないことにした。
後日、その神社が稲荷を祀っていると知る。
使いは狐。
土地によっては子供の姿をとることもあるらしい。
「……あんパンで助かった説ある?」
「あるね」
軽い。
でもそれ以降、二人はその神社の前を通るたびに、
なんとなく、
軽く、
ぺこっと頭を下げるようになった。
俺は毎回こう言う。
「いや別に信じてるわけじゃないけどな?」
毎回言う。
俺とアーシュは
~ TRUE LOVE 4EVER ~
次回
「超超超超耳袋 弐」




