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【完結】俺とアーシュ~TRUE LOVE 4EVER~  作者: 水谷誠司
超耳袋 拾篇

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70/90

超耳袋 拾――木更ガンダーコトリバゴ

 一泊の予定だった。


 水谷誠司とアーシュは、郊外の温泉町へ向かう途中だった。夕方の電車は空いている。窓の外の空は、妙に赤い。

 

 聞き慣れないアナウンスが流れた。

 次の駅名は、覚えがない。

 電車が停車する――。

 

 誠司は、地図を確認する前に立ち上がった。

 

 ホームに降りる。

 

 空が、ずっと赤い。

 


 駅員はいない。

 改札も無人。

 掲示板は空白。

 

 振り返ると、電車はもういなかった。

 

 街は静まり返っている。

 店は閉まり、灯りはない。

 

 二人は道に迷った――。

 

 山道に入る。

 

 やがて、柵に囲まれた場所に出た。

 有刺鉄線が張られている。

 

 奥に、六本の木が立っている。


 六角形。

 注連縄。

 手前に小さな木箱。


 黒ずんでいる。

 

 持ち上げようとしかけた。

 

 かすかな音がした。

 

 赤ん坊の泣き声なのか、

 猫の嬌声なのか、

 遠い哭き声。

 

 箱の中からというより、

 空気の奥から滲むような――。

 

 かすかな声だった。

 

 空は赤いまま。

 

 森の奥で、何かが揺れた。

 

 白い。

 人の上半身のようにも見える。

 腕が多い気がする。



 見知らぬ駅。

 贄にされた巫女。

 血を絶つ箱。

 

 そんな話を、知っていた気がする。

 

「触れないで」

 

 アーシュが言う。

 

 二人は柵に触れない。

 箱に触れない。

 振り返らない。


「戻らなきゃ……」


 線路には、近付かない。


 歩いて、歩いて――。

 

 気が付くと、二人は予約していた旅館の前にいた。


 部屋に入る。

 畳の匂い。

 普通の空。

 

 夕食は、時間通りに運ばれてきた。

 

 翌日、ニュースで山間部の地盤沈下と、廃業した商店街の倒壊を知る。

 詳細は出ていない。


 乗ったはずの電車の時刻は、記録にない。

 

 あの駅名は、思い出せない。

 黒ずんだ小さな木箱。

 注連縄の向こうの息遣い。

 

 空は、抜けるように青い。

 

 俺とアーシュは

 ~ TRUE LOVE 4EVER ~

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