初めてのkiss
ノートを開いた瞬間、
そこはもう夢だった。
アーシュは、俺の前に立っている。
距離は近いのに、触れてはいけない気がして、
でも触れてほしいとも思っている。
「セイ」
名前を呼ばれるだけで、
胸の奥がじん、と鳴る。
ナイトだとか、世界だとか、
そういう設定はもうどうでもよかった。
ここでは、俺は“選ばれている”。
アーシュの瞳はまっすぐで、
逃げ場がないくらい優しい。
「キスってさ……」
言いかけて、俺は黙る。
したことなんて、ない。
だから続きがわからない。
でも夢の中の俺は、
それを“知らないふり”ができる。
ノートに書く。
kiss
Kiss
KISS
英字が気に入らなくて、
何度も書き直す。
線が重なって、紙が白くなくなる。
first kiss
First kiss
FIRST KISS
アーシュは笑っている。
「緊張してる?」
頷くと、
「可愛いね」って、簡単に言う。
ずるい。
そんな台詞、現実じゃ言われたことない。
でも夢だからいい。
アーシュが、そっと近づく。
唇が触れる直前の、
一番甘くて、一番怖い距離。
俺は目を閉じる。
たぶん、これが正解だ。
音はしない。
でも、確かに“した”ことになる。
胸がいっぱいで、
それ以上は描写できない。
ノートの端に、
キラキラを描く。
ハートを描く。
消さない。
ここでは、全部うまくいく。
だから、最後は決まっている。
俺とアーシュは
TRUE LOVE 4EVERだから…………
初めてのkiss
(ノートに何度も書き直した跡)




