超耳袋 玖――ホテル探しならコトリバゴ
古い町に泊まる予定だった。
水谷誠司とアーシュは、観光地から少し外れた商店街を歩いていた。予約していた宿が急に休業になり、別の宿を探しているところだった。
夕方、閉まりかけた古道具屋の軒先に、小さな木箱が置かれていた。
手のひらより少し大きい。
黒ずんでいる。
「これ、何だろう」
誠司が持ち上げる。
意外と重い。
そのとき。
かすかな音がした。
最初、猫の鳴き声だと思ったのに、
赤ん坊の泣き声のようにも聞こえる。
遠い――。
箱の中からというより、空気の奥から滲むような音。
誠司は動きを止めた。
「開けないで」
アーシュが言う。
理由はない。
ただ、そうしたほうがいい気がした。
誠司は箱を元の位置に戻した。
店主らしき老人が、無言でこちらを見ていた。
二人は何も言わず、商店街を抜けた。
その夜、ようやく見つけた宿は、駅前の小さなビジネスホテルだった。
部屋は狭いが、清潔だった。
翌朝、古道具屋のある一角で建物の一部が崩落したと知る。
老朽化が原因だったらしい。
店は営業停止になったという。
箱がどうなったのかは分からない。
あの音が何だったのかも分からない。
俺とアーシュは
~ TRUE LOVE 4EVER ~
次回
「超耳袋 拾」




