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超耳袋 伍 ――山のてんそーめつ
山道は、思ったより静かだった。
水谷誠司とアーシュは、郊外のハイキングコースを歩いていた。木々は高く、道は細い。人影はない。
案内板には「この先通行注意」とある。
崩落の可能性、と小さく書いてあった。
少し進んだところで、音がした。
カタ、カタ。
乾いた、小さな音。
「聞こえた?」
誠司が言う。
アーシュは頷く。
風はない。木の葉も揺れていない。
それでも、もう一度。
カタ、カタ。
道の先は、木陰で見えにくい。
視線を凝らせば、何か動いているようにも見える。
小さい。
低い位置。
「戻ろう」
アーシュが言った。
理由はない。
ただ、足が止まった。
二人は来た道を引き返した。
振り返らない。
その日の夜、局地的な豪雨があった。翌日、そのハイキングコースの一部が土砂で塞がれたとニュースで知った。
音がしたあたりだった。
あれが何だったのかは分からない。
小石が転がっただけかもしれない。
動物だったのかもしれない。
ただ、あの音を無視しなかった。
俺とアーシュは
~ TRUE LOVE 4EVER ~
次回
「超耳袋 陸」




