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超耳袋 肆 ――背の高いぽぽぽぽーん
夕方の住宅街は静かだった。
水谷誠司とアーシュは、古い団地の脇道を歩いていた。街灯はまだ点いていない。
少し先の曲がり角に、背の高い影が立っていた。
異様に高い。
塀よりも頭が出ている。
白いワンピースのように見えた。
「……見ないで」
アーシュが小さく言った。
影は動かない。
ただ、こちらを向いているように見える。
距離はある。
顔は分からない。
ただ、縦に長い。
誠司は視線を落とした。
足元のアスファルトを見る。
心臓の音が少しだけ早い。
そのとき、どこからか低い声がした。
「ぽ……」
風ではない。
もう一度。
「ぽぽ……」
アーシュが、誠司の袖を引いた。
「遠回りしよう」
二人は来た道を戻った。
角を曲がらないまま、別の通りへ出る。
夜になって、その団地の前で大型トラックの接触事故があったと知った。ブレーキの故障だったらしい。
背の高い影が立っていた曲がり角だった。
あれが何だったのかは分からない。
見間違いかもしれない。
夕方の光の錯覚かもしれない。
ただ、二人はあの道を通らなくなった。
俺とアーシュは
~ TRUE LOVE 4EVER ~
次回
「超耳袋 伍」




