超耳袋 参 ――田んぼでくねったヤーツ
夏の午後だった。
水谷誠司とアーシュは、住宅街の外れにある河川敷を歩いていた。日差しは強く、草は伸びきっている。川の水面は光を弾いていた。
堤防の向こうに、田畑が広がっている。
その中央に、白いものがあった。
人のようにも見える。
細く、縦に長い。
ゆっくりと揺れている。
「……あれ」
誠司が指さしかけた。
アーシュが、静かにその手を下ろした。
「見なくていい」
距離はかなりある。
顔は見えない。
ただ、白い何かが、くねくねと揺れている。
風はない。
揺れ方が一定ではない。
人が立っているようにも見えるが、足元ははっきりしない。
誠司は目を細めた。
陽炎かもしれない。
畑のビニールかもしれない。
そう考えようとした。
「帰ろう」
アーシュが言う。
声はいつもと同じだった。
二人は堤防から視線を外した。
振り返らない。
足音だけが、草の中に吸い込まれていく。
数歩歩いたところで、誠司は気付いた。
背中が、妙に静かだ。
振り返れば、まだそこにいる気がした。
だが、振り返らなかった。
その日の夕方、局地的な突風が発生し、河川敷の一部で足場が崩れたとニュースで知った。
白いものがあったあたりだった。
あれが何だったのかは分からない。
見間違いだった可能性もある。
ただ、二人はそれ以来、夏の河川敷では遠くをじっと見ないようにしている。
俺とアーシュは
~ TRUE LOVE 4EVER ~
次回
「超耳袋 肆」




