超耳袋 壱 ――守られた夜
水谷誠司とアーシュは、駅へ向かう途中、住宅街の外れにある古い神社の前を通った。近道になる。境内を抜ければ、五分ほど早い。
鳥居は色褪せ、石灯籠も欠けている。人の気配はない。
境内に入ったとき、社の脇に子供が立っているのが見えた。
年の頃は十歳前後。みすぼらしい着物を着て、裸足だった。こちらを見ているが、表情は読めない。
誠司は立ち止まった。
「……こんばんは」
子供は何も答えない。ただ、視線を外さない。
アーシュが小さく言った。
「パン食べる?」
理由はない。ただ、そうした方がよい気がした。アーシュは持っていた、あんパンを子供にあげた。
誠司は軽く会釈をした。
「お邪魔しました」
二人は来た道を引き返した。
大通りに出た直後、強いブレーキ音が響いた。
大型トラックが信号を無視して交差点に突っ込む。対向車と接触し、衝撃音が夜気を震わせた。
もし境内を抜けていれば、二人はその交差点を渡っている時間だった。
誠司は時計を見た。五分。神社で立ち止まらなければ、ちょうどそこにいた。
アーシュが振り返る。
神社の鳥居の奥、灯籠の上に、白い影が一瞬だけ跳ねたように見えた。次の瞬間には消えていた。
後日、その神社が古くから稲荷を祀っていることを知った。使いは狐とされるが、土地によっては子供の姿をとるという話もあるらしい。
今でも、二人はあの日以降、神社の前を通るたびに軽く頭を下げる。
俺とアーシュは
~ TRUE LOVE 4EVER ~
次回
「超耳袋 弐」




