俺だけのナイト
――アーシュは、俺のことを見つめて言った。
「セイは、俺だけのナイトだよね?」
教室の窓から、夕焼けが差し込んでいる。
世界が、終わる前の色だ。
つまり、放課後。
俺は答えた。
「ああ……世界が終わっても、守る」
※世界=クラスの女子全員。
胸の奥で、何かがカチリと音を立てて噛み合った。
使命感だ。
いや、もっと正確に言えば――自意識。
俺は剣を持っていない。
馬にも乗っていない。
だが代わりに、俺にはある。
・誰にも理解されないという確信
・選ばれた者だけが背負えるという思い込み
・そして、無限に増殖する誇大妄想
アーシュが微笑むだけで、
クラスの女子の視線が“敵意”に見える。
――来る。
来るぞ、イベントが。
俺は心の中でコマンドを入力した。
>まもる
>かばう
>さきよみ
>アーシュを見つめる
SPELL MISS
……なぜだ。
完璧なはずなのに。
女子Aが笑った。
女子Bがアーシュに話しかけた。
女子Cが、無邪気に距離を詰めてくる。
世界が、終わる。
だが俺は立っている。
黒板の前。
チョークの粉が舞う中で、
誰にも見えない剣を抜く。
「下がれ」
誰にも聞こえない声で、俺は言った。
アーシュだけが、気づいたように瞬きをする。
その視線だけでいい。
それだけで、俺はナイトになれる。
たとえ呪文が全部MISSでも、
たとえ誰にも理解されなくても、
俺の中では、シナリオは常にTRUE ENDだ。
放課後の鐘が鳴る。
世界は、何事もなかったように続く。
でも俺は知っている。
この瞬間、確かに守ったのだと。
俺とアーシュは、TRUE LOVE 4EVER だから…………
次回
「アーシュの泣いた日」




