鳴り響く鐘は思考を殺す――人類最適化実験場としての学園
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キーン……コーン……
カーン……コーン……
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思考、停止。
起立。
列。
着席。
黙想。
世界は、再起動された。
チャイムが鳴った。
その瞬間、
世界が切り替わる。
ざわめいていた教室が、
一斉に静かになる。
立っていたやつは座り、
喋っていたやつは黙る。
考えていたことは――
途中で、切れる。
「……今の音」
俺は、
心の中で呟いた。
これ、
おかしくないか?
チャイムは、
ただの合図。
そう教えられてきた。
でも。
全員が、
同時に、
同じ行動を取る。
これって、
命令じゃないか?
俺は、
昨夜見たページを思い出す。
「音による思考の遮断」
「条件反射の形成」
「集団行動の最適化」
人間を、
効率よく管理するための
システム。
――学校。
時間割。
四十五分で区切られた思考。
チャイムで、
強制終了。
考えが深まる前に、
次へ送られる。
俺の右目が、
じくっと疼いた。
呪鏡眼。
見えなくていいものが、
見えてしまう目。
教室を見渡す。
黒板。
机。
列。
全部、
揃いすぎている。
「起立」
号令がかかる。
反射的に、
立つ。
……立ってしまった。
考える前に、
体が動いた。
怖くなった。
「礼」
全員で、
同じ角度で頭を下げる。
これは、
教育?
それとも――
訓練?
合唱コンクール。
横一列に並ばされ、
同じ歌を、
同じタイミングで、
同じ声量で。
協調性。
そう呼ばれるもの。
でも、
違う言葉もある。
同調。
外れたやつは、
目立つ。
声を出さない俺は、
責められた。
泣いたやつが出た。
空気が、
俺を処刑しようとした。
……やっぱり。
これは、
実験場だ――。
人類最適化。
従順で、
疑わず、
輪から外れない個体を
作る場所。
「……誠司」
隣から、
小さな声。
アーシュだ。
俺は、
はっとして横を見る。
「また、
考えすぎ?」
図星だった。
でも、
止まらない。
「チャイムってさ」
俺は、
小声で言った。
「思考を
止める音だと思う」
アーシュは、
一瞬だけ考えてから、
俺の方を見た。
「……じゃあさ」
「今、
誠司は何考えてるの?」
「……学校が、
管理装置だって」
アーシュは、
ふっと笑った。
「それ、
止められてないじゃん」
……あ。
確かに。
チャイムは鳴った。
でも、
俺はまだ
考えている。
アーシュは、
机の下で
俺の指に触れた。
小さく。
でも、
確かに。
「誠司が
考えるのをやめないなら」
「この装置、
失敗だね」
その一言で、
胸の奥が
すっと軽くなった。
学園が
どんな実験場でも。
チャイムが
何の音でも。
俺は、
俺の思考を
手放していない。
そして――
隣には、
俺を現実に
引き戻す存在がいる。
キーン……コーン……
また、
チャイムが鳴る。
でも今度は、
少しだけ
違って聞こえた。
俺とアーシュは、
~ TRUE LOVE 4EVER ~だから――――
次回
「その雲を信じるな――空より降る感情操作計画」




