怨霊調伏! 狂死郎再び!! 血に染められた体育館
体育の授業で、
とんでもない課題が出された。
『ダンス表現』
聞いた瞬間、
俺の中で何かが死んだ。
俺が踊れるダンスは、
一つしかない。
『ハレ晴レユカイ』
それ以外は、
知らないし、
覚える気もない。
「ハイ! グループに分かれて~」
体育の高田先生の一言で、
クラスメイト達は、
俺を置き去りにして、
次々とグループを決めていった。
もう、
振付けを始めている班もある。
完全に、
余り。
「……やれやれ」
思わず、
口から出た。
そのとき。
「誠司」
アーシュが、
隣に立っていた。
「一緒にやろう」
それだけで、
救われた。
俺は、
アーシュを見る。
「……踊れるの?」
「たぶん」
信用は、
しない。
でも、
やるしかない。
俺達は、
体育館の隅で向かい合う。
スマホは使えないから、
記憶だけが頼りだ。
「最初、
右からだっけ」
「いや、
左だった気がする」
そんな感じで、
ブラッシュアップが始まった。
『ハレ晴レユカイ』
知ってる人には、
一発でわかる。
知らない人には、
意味不明。
でも、
俺にはこれしかない。
本番がやって来た――。
音楽が流れる。
体育館に、
あのイントロが響いた。
ザワッ。
空気が、
変わる。
「……え?」
「この曲、
なに?」
俺は、
動いた。
体が、
勝手に。
覚えている。
完璧じゃないけど、
知っている。
「水谷が動いた――!」
クラスが、
ざわつく。
俺の隣で、
アーシュも動いている。
多少ズレてる。
でも、
楽しそうだ。
俺は、
途中で笑いそうになるのを
必死でこらえた。
恥ずかしい。
でも、
逃げなかった。
曲が終わる。
静寂。
誰かが、
小さく拍手した。
その瞬間、
全部どうでもよくなった。
俺は、
アーシュを見る。
アーシュは、
笑っていた。
「……楽しかったね! 誠司……」
それで、
十分だ。
狂死郎?
怨霊?
血に染められた体育館?
知らない。
今日は、
踊った。
俺とアーシュは、
~ TRUE LOVE 4EVER ~だから――――
次回
「愛と裏切りの映画鑑賞会~思いがけない大大大冒険~」




