阿鼻叫喚!! 文化祭は休みたい――!!
また、やって来た。
陽キャ達の、
陽キャ達による、
陽キャ達のための学内祭典。
文化祭――――。
俺は今、
やることが山ほどある。
『たまごっち!ゆめキラドリーム』の録画消化。
『ログ・ホライズン』の更新確認。
先週読み始めた
『Re:ゼロから始める異世界生活』
の未読を確認しなければならない。
ハッキリ言って、
そうとう忙しい。
なのに。
「水谷、
看板描いて」
陽キャから、決定事項みたいに言われた。
理由は、
美術部がいない。
漫研もいない。
そして。
「暗そうだから、
できるんじゃない?」
意味がわからない。
同調圧力、
最低、最悪だ。
気づいたら、
一人で教室の隅。
段ボールと、
絵の具と、
太いマジック。
ひとりぼっち。
……いや。
俺には、
アーシュがいる。
「大丈夫?」
アーシュが、
横に来てくれた。
それだけで、
ちょっと世界が戻る。
俺は、
看板に向き直る。
書く文字は、
シンプル。
『焼きそば』
とにかく、
読めればいい。
その横に、
ホカホカの焼きそば。
湯気を描いて、
麺をくねらせて、
ソースを濃いめに。
「俺も手伝うから、
頑張ろう♡」
アーシュが、
筆を持つ。
近い。
でも、
集中する。
「青海苔の感じ、
すごく上手だよ?」
「誠司、
天才だね♡」
……言いすぎ♡
でも、
悪くない。
俺は、
黙々と描いた。
アーシュがいてくれるから、
孤独じゃない。
時間が過ぎて、
看板が完成した。
誰かが言う。
「おー、
いいじゃん」
その一言で、
俺は解放された。
役目終了。
文化祭は、
相変わらず苦手。
でも。
アーシュがいたから、
今日は耐えられた。
それで、
十分だ。
文化祭当日、
俺はアーシュと二人で
暗い家庭科室で野菜を切っていた。
「カット野菜より、激安八百屋の方が安かったから」
「水谷、暇そうじゃね?」
陽キャの一言で、俺とアーシュが野菜を刻む係にされた――。
「ちょっと、急いでくんない?」
「列出来てるから、あくして」
切っても、切っても、終わらない。
また、陽キャの女子が泣いたら、
俺がクラスの害悪に認定されるので、
黙って切るしかなかった。
焼きそばは、
全部なくなった。
気づいたら、
完売していた。
達成感より、
安堵の方が大きい。
担任の先生が、
「お疲れさま」
と言って、
全員にジュースを奢ってくれた。
俺は、
ファンタグレープを選んだ。
理由は、
なんとなく。
紫で、
甘くて、
強すぎない。
文化祭のあとには、
ちょうどいい。
教室の端で、
缶を開ける。
プシュッ。
炭酸が、
喉にしみる。
誰かが言う。
「このあと、
駅前で打ち上げだって」
カラオケルームらしい。
騒がしいやつだ。
俺は、
スマホを見た。
なろう。
ブクマ。
未読。
優先順位は、
最初から決まっている。
今日は、
帰る。
片付けが終わって、
校門を出る。
夕方の空は、
少しだけオレンジ。
「誠司!」
アーシュが、
追いついてきた。
「一緒に帰ろ」
俺は、
少しだけ驚いて、
でも、すぐ頷いた。
駅前のカラオケとは、
逆方向。
人も、
だんだん減っていく。
「今日は、
お疲れさま」
アーシュが言う。
「……うん」
ファンタグレープの甘さが、
まだ残っている。
文化祭は、
正直しんどかった。
でも。
一緒に帰る人がいるなら、
まあ、悪くなかった。
そんな気がした。
俺とアーシュは、
~ TRUE LOVE 4EVER ~だから――――
次回
「怨霊調伏! 狂死郎再び!! 血に染められた体育館」




