男子トイレは悪魔の巣窟!? 禁じられた遊び――
腹が、限界だった。
俺は男子トイレの個室にこもって、
ひたすら耐えていた。
そのとき。
ガラッ。
誰かが入ってきた。
聞き覚えのある声。
須藤。
山崎。
前沢。
ちょっと悪めの男子三人だ。
嫌な予感がした直後、
匂いが変わった。
……煙草。
最悪だ。
もう用は済んでいる。
でも、
出られない。
ドア一枚の向こうで、
三人は平然と話し始めた。
ムカつくクラスメイトの話。
先生の悪口。
どうでもいい武勇伝。
俺は、
便座の上で固まった。
心臓が、
変な音を立てる。
(やばい……)
アーシュの顔が、
頭に浮かぶ。
きっと、
廊下で待ってる。
心配してる。
「大丈夫だよ、誠司」
脳内アーシュが、
励ましてくれる。
そのとき。
「そういえば、水谷ってさ――」
名前。
俺の名前。
終わった――。
呼吸が止まる。
でも。
「え? 誰?」
「いたっけ? そんな奴?」
……え。
「知らねーな」
一瞬で、
話題が終わった。
俺は、
そこにいるのに。
存在していない。
安心と虚しさが、
同時に来た。
アーシュは、
後でぎこちなく言ってくれた。
「……気にするなよ」
「誠司は、
ちゃんと俺が知ってる」
優しい。
でも、
心はちょっと疲れた。
チャイムが鳴って、
三人は教室に戻った。
俺は、
個室から出て、
手を洗って、
そのまま保健室へ行った。
今日は、
もう限界だった。
男子トイレは、
悪魔の巣窟だ。
次回
「阿鼻叫喚!! 文化祭は休みたい――!!」




