禁じられたミシン室!? 消失したパジャマ型紙――
家庭科室で、
俺は固まっていた。
……型紙が、ない。
確かに持ってきたはずなのに、
どこにもない。
机の上。
かばんの中。
もう一回、机の上。
ない。
「水谷くーん?」
呼ばれて、
終わったと思った。
皆の前で、
ソバージュヘアの先生が近づいてくる。
「型紙、失くしたの?」
「……はい」
声が小さすぎて、
自分でも聞こえない。
先生は、
何も言わずに棚を開けて、
代わりの型紙を出した。
「これ、使いなさい」
皆、見てる。
最低、最悪だ。
顔が熱い。
アーシュの方を見ると、
何も言わずに
ちょっとだけ親指を立ててくれた。
ありがとう。
でも、恥ずかしい。
さらに、地獄は続く。
生地を広げた瞬間、
空気が変わった。
……ネズミ。
どう見ても、
世界一有名なネズミ。
お母さんが
「かわいいでしょ」
って買ってきたやつだ。
これで、
俺は終わる。
クラスの一軍から、
影で
「ミッキー」
と呼ばれる未来が見えた。
アーシュが、
小声で言う。
「……大丈夫」
「完成したら、
誰も気にしない」
優しい。
でも、
今はそれどころじゃない。
恥ずかしいので、
俺は決めた。
――最速で終わらせる。
裁断。
物凄い勢い。
ハサミの音が、
止まらない。
仮縫い。
縫えてりゃ良い。
ミシン。
全力。爆速。
ガガガガガッ!!!
途中で止まる?
知らない。
縫い直す?
知らない。
とにかく、
速さだけを求めた。
結果。
俺は、
クラスで一番最初に
パジャマを完成させた。
先生が言う。
「……早っ」
皆が見る。
ネズミ。
でも、
もうどうでもよかった。
机に突っ伏す。
アーシュが、
小声で言った。
「……お疲れ」
俺は、
何も言えなかった。
地獄だった。
次回
「怨霊集いし音楽室――合唱コンクールという悪夢」




