呪鏡眼 vs 陰陽師――九十九狂死郎
旧校舎の結界が、
完全に消えた直後だった。
「……ほう」
拍手の音が、
闇の中に響いた。
振り向いた瞬間、
俺の右目が疼く。
――人間。
だが、
ただの人間じゃない。
「見事だよ、
呪鏡眼の使い手」
長い黒髪。
制服の下に、
異様な“気”をまとっている。
「お前は……九十九狂死郎――!?」
その名を聞いた瞬間、
呪鏡眼が告げた。
――陰陽師。
――術式完成度、異常。
「学園の結界、
勝手に壊してくれたね」
俺は一歩、
アーシュの前に出た。
「俺の相棒に、
手を出すな」
狂死郎の視線が、
一瞬だけアーシュに向く。
その目に宿る感情を、
俺は見逃さなかった。
――想い。
――叶わなかった執着。
「……君が、
彼の“ナイト”か」
次の瞬間。
符が、
空を裂いた。
「急急如律令!!」
紙が燃え、
雷のような衝撃が走る。
俺は即座に呪符を展開する。
「防呪・護輪!!」
衝撃が弾かれ、
床が軋んだ。
「速いな……!」
狂死郎は笑う。
「陰陽術は、
“準備”がすべてだ」
床一面に、
術式が浮かび上がる。
――結界重ね。
――俺のより、古い。
「だが――」
俺は、
右目を開いた。
「俺の眼は、
術の“裏側”が見える」
狂死郎の結界が、
ひび割れて見えた。
「破呪・返照!!」
結界が反転し、
狂死郎が一歩退く。
「……なるほど」
初めて、
本気の顔になった。
「君は、
危険だ」
「アーシュを、
守るためならな」
俺は叫ぶ。
「――顕現せよ、
黄泉路の理!!」
呪鏡眼が、
赤く光る。
狂死郎は、
符を構えたまま言った。
「その想いが、
いつか君を壊す」
「それでもいい」
「俺は、
アーシュを選ぶ」
沈黙。
やがて狂死郎は、
符を下ろした。
「……今回は、
退こう」
「だが覚えておけ」
「その恋も、
その力も――」
「いずれ、
試される」
そう言い残し、
狂死郎は闇に消えた。
旧校舎に、
静けさが戻る。
アーシュが、
俺の袖を掴む。
「誠司……」
俺は、
右目を閉じた。
「大丈夫」
「俺は、
まだ負けてない」
だが、
確信していた。
九十九狂死郎は、
必ず、
また来る。
これは、
呪術者同士の戦いの――
序章に過ぎない。
次回
「秘密の第二化学準備室!」




