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この孤独(きもち)は分け合えますか?  作者: 暦海


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12/18

後悔

「……あの、藤川(ふじかわ)さん。お疲れのところ、大変申し訳ないのですが……少々、お伺いしても宜しいでしょうか?」

「……はい。どうしましたか夜野(やの)さん」



 それから、およそ二週間経て。

 たった今帰宅した私に、何処か心配そうな表情で話し掛ける夜野さん。どうしましたか、なんて尋ね返してみたけど……まあ、用件は大方分かっていて。


「……その、藤川さんは既に立派な大人だと以前お母さまに申し上げた手前、このようなことをお伝えするのは矛盾があるかと思うのですが……ここ最近、貴女のお帰りが以前に比べずっと遅くなることが多いようなので、些か心配なものでして……」

「……はい」


 ……うん、やっぱりそうだよね。そっとポケットからスマホを取り出し画面を確認する。すると、時刻は22時17分――当然ながら、とうに夜の帳が下りていて。



「……えっと、その……友達と遊んでたら、いつの間にかこんな時間になってしまって……」

「……そう、ですか」


 少し目を逸らし、たどたどしく答える私。……うん、嘘はついてない……よね? 友達とは言い難い――と言うか、言えないけど……まあ、そこに関してはさほど正確に伝える必要もないだろうし。


「……藤川さん。もちろん、ご友人との時間を大切にすることは素晴らしいことだと思います。……ですが、このような時間までお帰りにならないというのは……まだたった数ヶ月ではありますが、私の見てきた貴女の印象とはおよそ一致しないものです。本当は、貴女自身のご意思に反しているのではないでしょうか? もしもそうでしたら、一刻も早く――」

「…………うるさい」

「…………え?」


 不意に零した私の呟きに、些か驚いた表情(かお)を浮かべる夜野さん。だけど、驚いたのは私も同じ――いや、きっと私の方が驚いているくらいで。……なんで私、こんなこと……だけど――


「――うるさいって言ってんのよ! 私がいつどこで何をしてようと、貴方に関係ないでしょ! もう()っといてよ!」


 慎ましさの欠片もない荒々しい口調で言い放ち、扉をピシャリと閉め自室へと入っていく私。一瞬振り返った際目に入った、ひどく心配そうな彼の表情にズキリと胸が痛んだけど……どうしてか、謝罪の一言すら口にできなくて。




「……なんで私、あんなこと……」


 部屋へと入った後、制服のまますぐさまベッドへ仰向きに倒れ込む。皺になっちゃうかもしれないけど、今は着替える気も起きない。まあ、後でアイロンでも掛ければ……うん、なんかもうそれも面倒かな。


 ……ほんと、なんで私、あんなこと……夜野さんは、ただ私のことを心配してくれていただけなのに。放っといてほしいなんて、ほんとは――



 ――だけど、結局その後も、彼の心配を余所(よそ)にほとんど何も知らない人達との夜遊びを続ける私。――後々、取り返しのつかない後悔に心を苛まれることになるなんて、考えもせずに。







「……すみません、夜野さん。このような時間に突然呼び出してしまって……いえ、それよりもまず、以前の件について謝罪すべきですね。大変不躾な態度を取ってしまい、本当に申し訳ありません」

「……どうか、頭をお上げください藤川さん。私の方こそ、藤川さん自身のご事情に差し出がましく踏み込んでしまい、大変申し訳ありません」



 それから、一ヶ月以上が経過して。

 すっかり黒く染まった空の下、少し肌寒い静かな公園にてあの日以来――夜野さんの憂慮をこっぴどく無下にしてしまったあの日以来、久方ぶりにきちんと顔を合わせ謝意を伝える私。尤も、避けていたのは一方的に私の方で、彼の方は私を見る度に心配そうな表情(かお)を浮かべていた。……ほんと、良い人過ぎるよね。今だって、なんでか彼まで頭を下げちゃってるし。……でも、そんな彼だからこそ真っ先に――友人より先生より、誰より真っ先に頼ってしまったのだろうけど。



「――それで、如何なさいましたか藤川さん。謝罪とは別に、何か大事なご用件がおありなのですよね?」

「…………はい」


 心配そうな表情のまま尋ねる夜野さんに対し、ぎこちなく首を縦に振る私。彼の言うように、今ここに来てもらったのは謝罪とは別に大切な用件があるから。言ってみれば、謝罪はそのついででしかなく……全く、自分の身勝手さがつくづく嫌になる。……それでも、他人(ひと)様の事情(こと)なんて考えてられないくらい、私にとって重大な問題で――



「……私…………妊娠、したかも……」






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