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第8話 駿甲相三国同盟の破断の時が迫る

 1565年に入り、武田信玄は対上杉戦争を展開するに際し、後方の安全を確保する為、この当時は庶子に過ぎない武田勝頼と、遠山直廉の娘にして織田信長の姪、龍勝院を織田信長の養女にした上で結婚させ、武田家と織田家の間で停戦協定を締結します。


 この辺り、私自身、黒田基樹氏が新書で描かれていたことから、蒙が開かれる事態になったのですが。

 戦国時代において、本格的な同盟関係の締結となると、当主や次期当主と、相手の当主の嫡出の娘なり、妹なりとの間の婚姻が大前提とのことです。

 だからこそ、こういった大前提を果たして締結された駿甲相三国同盟は、本当に特筆されるに値する同盟になるのです。


 武田家と織田家が同盟関係を締結したと言えるのは、1567年12月に織田信忠と、武田信玄と油川夫人の間の娘、松姫との間で婚約が調ったときだとか。

 油川夫人は正妻ではない以上、松姫は嫡出の娘と言えない、という指摘を受けそうですが、既述のように油川夫人は武田一門衆出身であり、三条の方亡き後、正妻に直っていてもおかしくない存在です。


 更に松平信康と五徳の関係等、他の戦国大名間の婚姻、同盟関係を考えれば、黒田基樹氏の主張は正しい、と私は考えざるを得ません。


 さて、松平信康と五徳の婚約が調ったのが1563年とのことで、こうしたことからすれば、織田家と松平(徳川)家はこの1565年時点では、完全に同盟関係に入っていました。

 そして、今川家と松平家が抗争中であった以上、このような松平家と同盟を結んでいる織田家と、武田家が停戦協定を締結することは、本来は今川家に了解を得るべきことでしたが。

 黒田基樹氏等に因れば、今川家の了解無くして、信玄は織田家との停戦協定を締結したようだと推測されているようです。


 何故にそのような事態が起きたのか、といえば、有名な永禄の変、足利義輝殺害事件が1565年5月に起き、後の足利義昭が流浪生活を送るようになったことが背景にあります。

 この当時、足利将軍の権威は大きく低下していましたが、地方になる程、それなりどころではない権威が遺っていました。

 その為に、足利義輝は将軍時代に、上杉家と北条家の講和斡旋を試みており、しかも、それなり以上の効果が上がっていたのが史実でした。 


 こうした背景から、足利義昭としては、自分の味方になる勢力、大名を集めようと奮闘していました。

 更に言えば、永禄の変を引き起こした三好氏への地方勢力、大名の反感は極めて強く、義昭に味方する為という大義名分は、かなりの効力があったのです。

 

 そして、足利義昭は武田家と織田家の停戦協定締結を斡旋して、それによって、織田家等の助力を得て自らが将軍になろうとしており、こういった義昭の斡旋があったことから、信玄としては今川家の了解無くして、織田家と停戦協定を結んでも問題ない、と考えたようです。


 更に言えば、世代の違いもあるでしょう。

 信玄にしてみれば、息子の嫁の兄が文句を言ってきても、所詮は若僧のことだ、それによって、武田家と今川家が手切れ、同盟破棄にまではなるまい、という甘い考えがあったのではないか、と私は考えるのですが。

 この考えはうがち過ぎでしょうか。


 ともかく、この武田家と織田家の停戦協定締結は、今川家中の不満を更に高めました。


 そして、1567年になり、武田義信は病死に至ります。

 ですが、これまでの経緯から、今川家中を始めとして、多くの者が義信は実父の信玄によって自害させられた、と信じる有様でした。

 そして、この事態が起きたことから、今川氏真が、義信の妻にして自らの妹を、武田家から呼び戻す事態が起きます。

 これは武田今川同盟を崩壊させることになります。 

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― 新着の感想 ―
 婚姻同盟は円満におさまっていれば皆んな幸せなんだけど何処かに歪みが生じると途端に機能不全に陥るのは戦国時代に関わらず洋の東西を問わぬ古今普遍の原則ですわな(・Д・)永禄の変の影響が京都近郊より遠く離…
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