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第6話 今川家中の不満の高まり

 武田家の後継者として、信玄の長男の義信が幽閉された後、誰が武田家の後継者になるかについて、色々と揉める事情があったのは既述しました。


 ともかく、この後継者を揉めるゴタゴタは、かなり長引いたようで、現代にまで遺された書状等からの推測になりますが、信玄の後継者として、四男の勝頼が確定したのは1571年になってからのようです。


(その要因として、黒田基樹氏等は1570年に三条の方が病死したというのを挙げています。

 当主亡き後、当主の正妻が、事実上の当主を務めるのは。この時代にはよくあることで、日野富子に至っては、明応の政変を引き起こした程です。

 三条の方としては、自分から愛妾に勧めた油川夫人が産んだ盛信を、武田家の当主(つまり自分の義子)にするように動いていた、と黒田氏等は主張されています。

 ですが、三条の方が病死しては、武田家を巡る状況等から、勝頼が武田家の次期当主になるのを、誰も押し止めることはできませんでした)


 さて、話を少なからず変えますが、駿甲相三国同盟が事実上締結されたのは、諸説ありますが、私としては今川、武田、北条三家それぞれの婚約関係が調った1550年のことであると考えます。

(実際に三家を巡る婚姻関係が完全に調ったのは、1554年のことになります) 


 それから10年以上、三者間の婚姻を紐帯とする三国同盟は、極めて強固な同盟として存続し続け、いざと言う際にはお互いに援兵を送り合う関係が続きます。

 既述ですが、上杉謙信の関東侵攻に対して、武田家と北条家は積極的に連携して対処しており、1560年の上杉謙信による小田原城攻囲の際には、桶狭間の戦いの後で、今川家の混乱が完全に収まってはいないのに、今川家から北条家に援兵を送った程です。


 ですが、そういった同盟に翳が落ちだしました。

 特に今川家中にとって、その翳から徐々に不満が起きることになるのです。


 原因は不明ですが、桶狭間の戦いの直後、今川氏真が武田家に不信を抱く事態が起きたようで、信玄から家臣等に対して、氏真の不信を何としても解消するようにと指示する書簡が複数、遺っています。

 これについて、一部の研究者は、桶狭間の戦いに武田家の兵が参加していて、その行動に問題があった、更に義元の死の一因に武田家の兵の行動がなったのでは、と憶測しています。

 現代まで書状が複数、遺っているということは、それだけ大きな問題になっていたということで、この前後の状況からすれば、この憶測を無下には否定できません。


 その傍証ですが、甲陽軍鑑に桶狭間の戦いの詳細が描かれているという点が挙げられます。

 これは武田家の兵が桶狭間の戦いで参戦しており、その為に伝聞で、桶狭間の戦いの詳細が甲陽軍鑑に載せられる事態が起きたと考えるのは、憶測が過ぎるでしょうか。

 勿論、度々述べていますが、甲陽軍鑑の信憑性が低いのは論を待ちません。

 ですが、そうとでも考えないと桶狭間の戦いの詳細が何故に描かれたのか、どうにも謎なのです。


 そして、この氏真の不信は表向きは解消されたようなのですが。

 その後に続けざまに起きたのが、上杉謙信の関東侵攻です。

 これに対処する為に、武田家も今川家も北条家に対する援兵を派遣することになりましたが。


 武田家はこの援兵によって、西上野を得る等の実利がありました。

 ですが、今川家はこの援兵によって領土を広げるどころか、西三河で松平元康が自立する等の事態が連鎖的に引き起こされることになり、踏んだり蹴ったりとしか言いようが無い事態に見舞われたのです。

 

 更に同盟の誼を重視する氏真の政策は今川家中に不満を澱ませることになり、「遠州忩劇」等の事態を引き起こすことになります。

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― 新着の感想 ―
 着々と積み上げられる不信のフラグ(´⊙ω⊙`)不信の始まりたる義元横死の桶狭間に武田の援兵が参加してたのは三国同盟のよしみで当然だけど──何故か巷間語られていない不思議──その上──実は敗北に繋がる…
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