「伝説の眠る館」(前)
「何を言ってるの。
『伝説の眠る館に案内します、勇者団様』
と、お婆さんが言うので、興味本位で付いて行ってるんじゃないの」
「えーーっと、先頭はメリオーレスさんで、お婆さん、居ないよ?!」
「えっ? パレルレ、あの危険な桃色のローブを着たお婆さん、見えてないの?」
『ハザードピンク?!』
と、不思議がるサブブレイン。
「杖も髪もピンクピンクよ」
と、前方を指すジュテリアン。
「うへえ、見えないや」
ガンマ線視覚、熱感知眼、プリズマム視覚などを使ってみたが、何も感知できなかった。
何者だ? ピンクピンク婆さん。
「あっ、建物が見えて来た」
ぼくのその声に、ジュテリアンは前方を見て、
「ほら、建物もピンクじゃないの」
と言った。
なるほど、あれがジュテリアンが聞いたと言う「伝説の眠る館」か。
三角屋根も、石壁も、窓枠もピンクだった。
草むらに囲まれ、蔦に絡まれている。
随分長く人が住んでないんじゃないか?
「建物は実在するんだ」
だけど、お婆さんの姿は見えなかった。
何故だろう?
ぼくがメタルゴーレムだからだろうか?
この電子眼に反応しないと言う事か?
ピンクに塗られた木の扉が自動的に引き開けられ(お婆さんが開けたのだろうが)、当たり前のように入ってゆくメリオーレスさんと蛮行の三人娘。
もちろん、ぼくも後に続いたのだが。
二階建てくらいの高さの建物だったが、中に入ると一階構造だった。
見上げれば、天井の梁が剥き出しだ。
森の中のせいで、窓からの明かりは乏しい。
しかし壁に埋め込まれた発光石は多く、壁のピンク色を反射して、室内は淡い光に満ちていた。
ワンルームなので、暖炉、室内井戸、台所、書斎などが見渡せた。
いずれも埃はなく、掃除は定期的に行われているようだった。
人が住んでいないような外見は、フェイクか?
床板はなく、土の地面が剥き出しだ。
下草も、そこかしこに生えていた。
そして部屋の中央に、大きな岩が鎮座していた。
やや平らなその岩の上に、石の長靴が乗っていた。
いや、少し岩にめり込んでいる。
思うに、この岩を隠すために家を建てたんだろう。
岩に刺さっている形は、クカタバーウ砦で見た「伝説の棍棒」と一緒だ。
目に見えないお婆さんに誘われて、石造りの長靴を引っこ抜きに来たのか、ぼくらは。
その平らな岩にめり込んだヒールの高いブーツは、膝の上まであるんじゃないかと思われた。
ロングロングブーツだ。
「あれ、女性用だよね? 細いし、ヒール高いし、膝上ブーツだよね」
と、ミトラ。
「まあ、伝説の大剣などは男性用と言えようから、女性専用の伝説の防具もあろうな」
と、フーコツ。
少し暗いと思ったのだろう。ミトラが、
「パレルレ、明かりお願い」
と言い、
その声に「おけ」と答えて、ぼくは前照灯を始め、全ライトを点灯させた。
ライトの中に、背の低い桃色づくめの老婆が浮かびあがり、両手で顔を覆って、
「ぎゃっ!」
と叫んだ。
「ようやく見えた」
ピンクの老婆が。
声もようやく聞こえた。叫び声だったが。
「その偽物の太陽を消すのじゃ。凶光が強い。心が消えてしまう」
「パレルレ、消して!」
ミトラが言うので、やむを得ずライトを消すぼく。
老婆はまた、見えなくなってしまった。
「パレルレにはお婆さんの姿が見えてなかったんだって」
と、ジュテリアンが言ってくれた。
「声も聞こえなかったんだ」
と、ぼく。
まるで異空間からの幻影だ。
「ライトを放ってやっと姿が見えたし、ようやく声が聞こえたんだ」
「いや、伝説の精霊であろうが、あの者は」
と、フーコツ。
「せ、精霊?!」
声を裏返すミトラ。
「フーコツ、分かってたの?」
「伝説を守っておるのだから、それが光系であろうが闇系であろうが、精霊に間違いなかろう」
「伝説と言うので付いて来たところはあるんだけど、石のロングブーツよね? 誰が履くのかしら?」
と、ジュテリアンが岩の上の長靴を指す。
続けて、
「あーー、『このブーツを履く者は神技に勝る蹴撃を得るであろう』って、お婆さんが言ってる」
と、教えてくれた。
「物理攻撃を増強させるブーツなのか?」
と、ぼく。
「ふさわしい者が履いたら、革製に変化するんだって。冬暖かくて、夏は涼しいそうよ」
と、ぼくのためにミトラが、お婆さんの声を伝えてくれた。
次回「伝説の眠る館」(後)に続く
お読みくださった方、ありがとうございます。
次回.第四十二話「伝説の眠る館」後編は、明日の金曜日に投稿します。
なぜ一度に投稿しないかというと、シンドイからです。
昔はやっておりましたが。
スマホでちまちま打ち込んでおりまして、これが案外疲れます。
で、無理をせず、少量を送るようになりました。
午後からは、回文オチ形式のショートショート
「続・のほほん」を投稿します。
こちらは毎日の投稿ですが、短いのでなんとかなってます。
ではまた明日「続・のほほん」と「蛮行の雨」で。




