「サブブレインのままに!」(後)
ぼくの四つの手の四本の指たちが、猛烈な勢いでお互いを擦り合わせ始めた。
メタルでアクリルな指はどんどん静電気を溜めてゆく。
(おおおおお!)
電圧が百万ボルトに達したのが、体感的に分かった。
四つの手が放電して、光と雑音を発し始める。
しかもぼくのボディの中身は、絶縁体に守られているのだ。
電気ウナギ状態で、ぼくの意思に関係なく四つの足の裏にタイヤが出た。
これはサブの暴走か?!
「やるのか、この野郎!」
叫んで野盗たちは、腰の長剣を抜いた。
『成敗!』
サブが叫んだ。
またしてもぼくの意思に関係なく、背中と肘とふくらはぎの補助推進孔を開き、炎を噴かした。
ロケットダッシュだ。
これは、サブの仕業か脊髄反射か?!
野盗たちは、ぼくの人智を越えたダッシュに驚きつつも、果敢に斬り掛かって来た。
剣を振り払うように接触するぼくの放電する指。
剣を伝って百万ボルトの通電を喰らい、武器を放り出し叫び声を上げて地面に倒れる野盗たち。
一瞬、赤く光る盾のようなモノが野盗たちの前に現れたが、ぼくの放電と同時に砕けて消えた。
脆い。
なんだったんだろう?
電流が低いから、死なないはずだ。
電圧は高いが、十ミリアンペアもない体感だった。
呻きつつも立ち上がる野盗たち。
「くそっ、何をしやがった?!」
「ゴーレムのくせに人間様をよくも!」
身体のどこかで、カチン! と音がした。
安全装置が外されたのだと直感した。
指先に通じるコードが体内で開き、たちまち電流が上昇してゆく。
(いやいや、こんなチンピラを殺してどうすんのっ?!)
(止めろサブ! やめろ、ぼく!!)
(人間なんて、百ミリアンペアで死ぬんだから!)
「やりすぎないでね、パレルレ。街の警備隊に突き出すんだから」
ミトラがそう言うと、千ミリアンペアまで上がっていた電流は急激に下がっていった。
(これが命名者のチカラか?!)
(頼んだぞ、ミトラ!)
(待て待て。ぼくって、言いなり? 奴隷状態?)
(い、いやそんなハズはない。彼女は仲間で友だちだっ!)
ぼくの思いは千千に乱れた。
(とにかく、頼りにしているぞ、サブブレイン!)
次回「ミトラが『蛮行の雨』」(前)に続く
意外と短いので自分でも驚いた「サブブレインのままに!」後編だったのだった。
明日は、たぶん普通の長さ? の
「ミトラが『蛮行の雨』」前編を待て!
第一部の連載の終わった、
「魔人ビキラ」、「のほほん(「続・のほほん」は、連載中)」もよろしくお願いします。
よろしかったら、読んでみて下さい。




