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「妖魔オトメナ・マコ」(前)

「無論、新たな『伝説』を探す!」

  即座に言い放つフーコツ。

「ワシは、もっと大量に魔力を貯蔵出来る杖が欲しい」


確かにフーコツの杖は短い。

魔力の貯蔵タンクが欲しい、と言いながら、何で短杖(ショートロッド)なのかは不明だ。

たぶん、ナニか利点があっての事だろうが。


ノッポさんと太っちょさんが、ミトラの斧を持ち上げようとしているが、顔ばかりが気張って、やはり(わず)かしか動かない。

つーーか、ちょっぴりは動かせるんだ……。


「しかし、順番としては、ジュテリアンが先であろう」

  入団順序を言っているのだろう。

「早く『伝説の回復杖(ヒールロッド)』を引き抜きに行こうぞ。その次は攻撃杖(アタックロッド)じゃ」


「ふっふーーん!」

という顔で、斧刃(ふじん)を引っ込めてホルスターに『伝説』を収めるミトラ。


「あーー、私は自分の短剣タイプの回復杖、無法丸が気に入っているので、後でいいわ」

「でっ、では!」

  フーコツは目を輝かせた。

「攻撃魔法の杖を求めて旅立とう」


「アタックロッドは人気が高くて、『伝説』は何十本もあるわよ」

と、グローネ副所長。

「一番近いのは、ここから西の方角にある大きな街、ユームダイムね」


「ユームダイムに伝説の武器が?」

  冒険者歴七十年のジュテリアンが眉を寄せた。

「噂は前からずっとあったけど、とうとう見つかったの?」


「つい最近、大樹に落雷してね、折れて倒れた跡から出てきたそうよ、神岩に刺さった杖が」

  と、グローネ副所長。


「大樹の中が空洞になってたんだって。神様の悪戯(イタズラ)かもね」

  と笑うメリオーレスさん。

「『蛮行の雨』、もっと街の掲示板に気をつける事ね」


「ああ、我らは旅に明け暮れておるから、情報に(うと)くなる。掲示板は(フェイク)が多いので、ついつい見なくなる。旅人の常なる不覚だ」

    と、肩を(すく)めるフーコツ。

「しかし、ユームダイムには遺跡屋があったろう。パレルレの武器が買えるかも知れんぞ」


「あーー、遺跡屋」

     と、顔を曇らせるミトラ。


遺跡屋の話は、前にミトラから聞いた事があった。

大魔王大戦で使われたムン帝国の武器を売ったり買ったりする商人で、大勇者サブローの子孫だ。


大勇者が、『子孫が生活に困らないように』と、始めさせたのが、遺跡屋なのだった。


いわばミトラの親戚なのだが、阿漕(あこぎ)な商売をする者がチラホラ居て、ミトラも苦手だと言っていた。


そこらへんは割り切って、武器とか防具を買ってくれるとありがたい。

たぶん高価だろうが、目安が分かればお金を貯めて、また改めて買いに訪れるという手もある。


「今ここで、新発見の攻撃杖を知り得たのは、天命と言う他あるまい。次の目的地はユームダイムだ」

  フーコツが高らかに宣言した。


そして、異論のあるメンバーは居なかった。


「目的地のユームダイムの『ユーム』って、以前聞いた『ユーム大僧侶』と何か関係あるんですか?」

  と、ぼくは聞いてみた。

これも小さな疑問だ。


「ああ、『ユーム大僧侶 降臨(こうりん)の地』って言われてるから、『ユーム』が入っているのよ」

  と、僧侶ジュテリアン。


「でも、同じ事を言っている街はあちこちにあるわね、『大僧侶降臨の地』」

   と、メリオーレスさん。

「有名人は(つら)い、と言うヤツじゃのう」

   フーコツが笑った。

「フーコツ。笑うのはユーム大僧侶に失礼だ!」

   と、ミトラが怒り、

「あう、すまんすまん」

   ミトラの剣幕に、フーコツは真顔になって謝った。


「仙人になるんだから、伝説の武器のひとつやふたつは持ってないと」

   ヨイショするぼく。

「そういう事か。双杖(そうじょう)使いの仙人?!」

   と、ジュテリアン。

二刀流ならぬ二杖(にじょう)流か?


「双杖で無双するは、これ相乗効果なり!」

     早くも未来の自分の姿に酔うフーコツ。


蛮行の三人娘が、場所柄もわきまえず盛り上がっている所へ、

「大変です、グローネ副所長っ! 食物蔵に妖魔が!!」

  と、男性職員が一人、飛び込んで来た。


「ぬう! 伝説談義に水を刺す妖魔っ。許さん!」

  フーコツがガチに怒った。


妖魔を退治すべく、さっそくに討伐ギルドの裏庭に向かう「蛮行の雨」の他、ノッポさん、太っちょさん、グローネ副所長、メリオーレス受け付け嬢。

  そして先導する男性職員。


道すがら、妖魔話で盛り上がる一行だった。


「ふむふむ。美少女の顔に、ぬるぬるのズン胴?! 恐いわね」

  と、ジュテリアン。

「髪型は、こう、パッツンなんですね?」

  と(ひたい)に横一文字に指を動かすミトラ。

「そして後ろ髪は、襟足(えりあし)あたりで真っ直ぐに切り(そろ)えてあるのですね?」

  ああ、おかっぱ頭だ。


「分かりました。ガラッパ頭です」

   と、ミトラ。

「カワタロー頭とも言いますね、その髪型」

   と、ジュテリアン。

「ワシの地方では、ガタロウ頭と言うのう」

   と、時折り(じじ)臭いフーコツ。

「そして胴体は筒状でヌラヌラしてて、表皮にブツブツがあって、緑と茶の(マダラ)の体色なんじゃな?」


「分かったぞ。アレだ。オトメナマコ!」

  と、ぼく。

「そう、それ。オトメナ・マコ! 美少女妖魔マコちゃん」

  と、満面の笑顔でミトラが笑った。


発音が微妙に違うが、こっちの世界にも居たんだ。

(おか)のナマコ、オトメナマコ!



          次回「妖魔オトメナ・マコ」(後)に続く




次回、「妖魔オトメナ・マコ」後編は、明日の金曜日に投稿します。

回文オチのショートショート「続・のほほん」は、本日午後に投稿します。


一時間に五十個は流れるのではないかと言われたペルセウス流星群は、空が曇っていたため、ベランダに出たものの、すぐにあきらめてしまいました。


次は五年後とか。

生きてたら、また見てみようとしてみたい。

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