「カウ・ヴォンの盾」(前)
「我が名はランランカ。転生担当官である。帝辺進を、この世界に転生させた者だ」
ランランカと名乗った、純白のワンピースを着た女性は言った。
白い空間で会った時と違って、ネックレス、イヤリング、プレスレッド、そして幾つもの指輪をしている。
自分の能力を強化しているのだろう。
「ちょっぴり手違いがあってね、ススム君は身体を持たずにこの世界に転生してしまったのよ。で、正しく転生させるべく、吾輩が現われたと言う訳なのよ」
「正しく転生? 身体のないスカタン転生はオカシイと思ってたけど」
手に持った魚の骨を食べ始めるミトラ。
「ススム君、どこが良い? 平民は嫌よね? 貧乏は嫌よね? 大丈夫よ。やっぱり大貴族の子息? 女性もオッケよ。それとも王様になって、支配欲を満たしてみる?」
(あっ、生まれ変わって、赤ん坊からやり直す有名なヤツ?!)
「王様の三男坊とか四男坊になって、陰謀を巡らせ兄たちを堕として行くのも良し!」
(ああ、やっぱり楽ではないんだなあ)
「悪どい令嬢となって、正義を気取る学園の馬鹿どもを薙ぎ払うも良し!」
(へえ、そんな未来もあるんだ)
「魔王になって世界を征服するも良し!」
(あっ。勇者に世界を半分あげるヤツ)
「待ちなさいよ。ナニを自分の世界に浸ってんのよ!」
ミトラが叫んだ。
「今さら転生のやり直し? ふざけないでよ。パレルレはもう、あたしたちの仲間なんだから」
「勝手な真似はさせないわよ、転生の女神!」
ジュテリアンも叫んだ。
「あーー、すでにワシらとパレルレは仲間で友だち、仲友だ。手遅れ女神の出る幕ではない」
堂々と転生官に喧嘩を売るフーコツ。
しかし、蛮行の三人娘が、転生官を女神扱いしているのが気になる。
異世界からの来訪者に対するリスペクトか?
「ススム君も、そんなポンコツな身体に転魂させられてお困りでしょう。絶世の美女や、ムキムキの筋肉勇者の方が良いわよねっ!」
ノッポさんや太っちょさんは、三人娘の食欲に圧倒されていたのだが、女性たちの手が止まったので、
「今だ」とばかりに食べている。
「王にのし上がるにせよ、悪どい令嬢に生まれ変わるにせよ、そうなったらもう私たちとは二度と会えないんじゃないの?」
と、ジュテリアン。
「まず、どこに生まれ落ちるかなんて、あなたたちに教える義務はないわね」
「短い縁であったな、パレルレ」
「フーコツ!」
と怒鳴るミトラ。
「ワシの渾身の冗談にその反応か?! むむう、かくなる上は……、転生の女神よ、パレルレを改めて転生させたくば、ワシらを倒してからにするのだな」
おお、
『娘が欲しくばワシを倒してみよ!」
という父親の断末魔的あがきにも似て。
「ななな、何を言ってるの貴方たち。これはススム君が人生を正しくやり直す大切な一択肢なのよ。身体を生身に戻してなにが悪いの?!」
「なんか、胡散臭い。あたしの呪術師としての勘が、そう言ってる!」
と、ミトラ。
「あなた、自分の仕事上の失敗を誤魔化そうとしているだけでしょ?!」
と、ジュテリアン。
「ぬ、ぬわにーー! 人型の分際で生意気なっ」
白衣の美女は形の良い目を吊り上げた。
(なっ、なんという事態だ。ぼく如きの事で、四人の女性が言い争っているっ)
(しかもその内の三人は、生半可ではない美女っ!)
(いや、残りの小柄な一人も可愛いっ)
「という訳で、三対一の決闘だ。ワシらを倒せたら、パレルレを連れてゆくが良い」
「吾輩は落雷魔法を使うのだが、それでも戦うと言うのか?」
(うわっ、秒速三十万キロ来たっ!)
「げっ。わわ私、僧侶なので、ちょっと戦闘は」
大いに腰を引くジュテリアン。
「ジュテリアン、あなたのメイド服は火の耐性も、風の耐性も、水の耐性も、雷の耐性も、つーーか、ひと通りの魔法耐性があるじゃん」
「さらに、お主の金色の盾は、火も風も水も、そして雷も通すまい? 少し離れて盾を張っておれば良い。不参加は許さん」
「えっ? ひょっとしてそちら、三人とも落雷耐性があるの?」
「当然よ。あたしら『蛮行の雨』をなんだと思ってんのよ」
ミトラが鎧の胸を張った。
「電撃を操る者は珍しい。だからこそ、防御は必須なんじゃないの」
次回「カウ・ヴォンの盾」(後)へ続く
お読みくださった方、ありがとうございます。
次回、第三十六話「カウ・ヴォンの盾」後編は、明日の金曜日に投稿します。
回文オチのショートショート「続・のほほん」は、午後の投稿になると思います。
第一部は、111話で撃沈しましたが、、第二部はもうすぐ200話なので、嬉しいです。
継続はチカラなり? ほなまた昼から。




