「転生担当官ランランカ」(後)
「なんの木箱かと思ってだけど、お土産だったのね」
と、ジュテリアンが笑った。
「はい。あのう、大事がなければ、良い人らしいですよ、カックス隊長は」
と、ノッポさんがモミアゲ隊長を擁護した。
「蛮行の雨」の三人娘が、自分の隊長に冷たくしているようなので、気になっていたのだろう。
「その大事な時に何が出来るかが、人として大切であろうが」
と、フーコツが鼻で笑った。
「普通に暮らしてたら大事もないから、『良い人』で人生が送れるんでしょうけど」
と、ミトラ。
その「蛮行の雨」の返事で、ノッポさんは黙ってしまった。
着任早々ながら、テント村の前線で声を出し続けたノッポさんと、何処かに雲隠れしていたモミアゲ隊長への、分かりやすい態度の差であった。
テント村を過ぎ、岩と雑木林の散らばる街道に入った。
池があり、水鳥や小動物も見られる。
ミトラが、
「ここらでお昼ごはんにしよう」
と言うので、草地に逸れる幌馬車。
そして、一角馬の手綱はそこらの木の枝に巻き付けた。
適当な大きさの岩を、水の魔法で水平に斬ってテーブルにするフーコツ。
ウルトラウォータージェット??
いや、ミラクルウォータージェットだ。
超高速、超高密度な超超高圧水のエナジーを利用して、物質を切断する?!
ぼくの勤めていた会社にも、ウォータージェットはあって、ゴムや金属など様々な物体を加工していた。
が、ここまで大きく、高密度なはずの岩を切断するのは、もはや鬼畜の仕業と言える。
ぼくが四本の手で押して、切断された岩の上部を地面に落とした。
「うわ。切断面、つるんつるん!」
ミトラがテーブルになった岩を撫でてはしゃいだ。
「変質も変色もない感じ!」
ジュテリアンも感嘆の声を上げた。
「究極武器じゃないの。なんで攻撃に使わないの、フーコツ」
「これは工作用に会得した光呪術だ。工作以外に使ってはいけないであろう?」
「いやそれは、個人的観念的思想的な縛りでしょ?!」
と呆れるジュテリアン。
「ムズカシイ話はそれくらいにして、お昼、お昼! さあ、食べましょう」
と、ミトラ。
「いや、難しくない!」
と言いながら、食器や食べ物を並べるジュテリアン。
幾つもあったが、砦の用意してくれた御弁当なので、『神岩を砕きし斧焼き』が、どっさり。
焼き肉。焼き魚(砦の隣を流れている河で獲れたものだろう)。
干し肉。干し魚。焼き菓子。素揚げ菓子。そして蜂蜜。
果物や色付き飲料などもあった。
「これ、昨夜の余り物よね」
と言って笑うミトラ。
「次の宿泊予定の村に持って行って腐っても困るので、食べ切るぞお」
皆んなで姦しく食べていると、純白のワンピースを着た女性が近づいて来るのが見えた。
髪は白く長く陽光に輝いている。
肌も雪のように白く美しい。
「むっ。頭部にプラプラと二本、揺れているのは触角か?!」
剣と間違ったのか、スプーンを握って立ち上がるノッポさん。
「美人だが、化け物のたぐいではないのか?」
太っちょさんも、骨付き肉を握って立ち上がった。
「くっ。肌は新雪のように白く、その身の熟しは優雅にして上品。まるで女神のような笑顔ではないか」
だがぼくは知っている。
近づいて来る美女は、白っぽい転生の場で、ぼくに身体や特殊能力を渡し損ねた転生担当官だ。
長い白髪を揺らして、
「ご機嫌よう。転生者・帝辺進。二十四才」
と、純白の美女は言った。
「はあ? テーベス・スム? なにそれ」
と、ミトラ。
「パレルレを変な名前で呼ばないで頂戴」
「喜びたまえ、ススム君。キミに新しい身体とスキルを持って来てやったぞ」
「待ちたまえ、白衣の女。キミはそもそも何者なんだ?!」
食べ切って白骨化した焼き魚を突きつけ、ミトラが立ち上がった。
(新しい身体と、スキル?!)
さすがにぼくは、心が躍った。
内緒だが。
次回「カウ・ヴォンの盾」(前)に続く
お読みくださった方、ありがとうございます。
次回、第三十六話「カウ・ヴォンの盾」前編は、明日の木曜日に投稿します。
後編は、明後日の金曜日の投稿になります。
同時投稿中の、回文オチ・ショートショート「続・のほほん」は、本日午後の投稿になります。
よかったら、読んでみて下さい。




