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「大脱走」(後)

「あっひん!」

           「うぐうぐ!」

  「ぐへはっ!」

ぼくの()みしだきに(あえ)ぎ続けるフーコツ。


「あっ。ひょっとして、強化剤の毒素が施術(せじゅつ)のお(かげ)で汗になって身体(からだ)の外に出ているのかも」

「あっ、ミトラ、そうかも。じゃあ、次は私よ!」

フーコツの汗を()きながらジュテリアンが言った。


そうか、揉み揉みが功を(そう)して、副作用を消そうとしているのか。

  ぼくはさらに揉みしだきに力を込めた。

       「ああっ、あうっ!」

    「ひいい!」

「うぱあぁ!」

たっぷりと寝汗をかくと、熱が下がるようなものか?


「こらっ、太股(ふともも)そんなに広げなくていいから」

「こらっ、あたしの指を(くわ)えるんじゃない」

フーコツの汗を拭きつつ、身体を押さえ込むミトラとジュテリアン。


そうやって、フーコツを攻めて攻めて攻め揉み倒していると、ミトラが、

「なんだか外が騒がしくない?」

  と言って、フーコツの肢体(したい)を離れた。


カーテンを開け、窓の前に立って外を(なが)めた。

  二階の部屋なので、視線は下を向いている。


「あれれ。なんか、怪我(けが)人が沢山(たくさん)運ばれて来たみたいだよ」

  ぼくらを振り返って、ミトラが言った。


「沢山の怪我人? 夜に運ばれて来る作戦だったよね? 予定が変わったのかしら」

「あはあは。本物の怪我人たちであろっっうっううう!」

  喘ぎながらフーコツ。


「そうか、本物の怪我人なら仕方ないわね」

  と、ジュテリアン。

「魔族たちが、脱出のチャンスだと思わないといいけど」


「ばたばたして、実際に警備が手薄になってるんじゃないかな」

  と、ミトラ。

「確か、脱出の合図は、看守さんがそれとなくムンヌルに伝える手筈(てはず)だったよね?」


「げげげ幻魔がチャンスと見て、勝手に暴れねば良いいいいひいい!」

  強くのけ反るフーコツ。


「バンガウアなんか、チャンスと見たら勝手に剛腕を発揮しそう」

   と、ミトラ。


「えーー、まだ陽が落ちてないわよ」

フーコツの汗を拭きながら、ジュテリアンが窓を見た。

  夕焼けの赤い雲が見えていた。


脱出が仕組まれているのを知っているのは、ムンヌルだけだ。

  魔族の暴走があっても、仕方がないかも。


「あっ、がすんどしんって、凄い音がしてきた」

  窓を開け身を乗り出すミトラ。

何処(どこ)からかな?!」

    首を左右に振っている。


「まままさか牢屋の方ではあるまいなはなはなはん!」

  (うめ)きながらも心配するフーコツ。


「うん。ヤバいかも。着替えとこう」

ミトラは窓を離れ浴衣を脱いで、古代紫色の(よろい)に着替えた。

(ヘルメット)小手(ガントレット)を装備したフルアーマーである。


窓から人々の叫ぶ声が入ってきた。

  窓に走り寄って、

「あっ、壁男(ディンディン)だ。やっぱり脱獄しちゃったんだ!」

窓の(ふち)に両手を置き、両足をぴょんぴょんさせて実況するミトラ。

「巨大化ディンディンが先頭に立って走ってるわ! あたし、行って来るね」


「ワワワワシはワシんんっ、んんんっ!」

「はいはい、ワシさんは揉みしだかれてなさい」

  そう言うと、ミトラは窓に片足を掛け、そして跳んだ。


変わってジュテリアンが窓辺に走り寄る。

「シンガリはバンガウアね。良かった。素手だわ」

武器がなくても、バンガウアに殴られたら即死しそうな気がするが。


「ミトラちゃんがバンガウアに挑むわ。棍棒に斧刃(ふじん)は出してないけど」

  窓の下を眺めてジュテリアンが言った。


ミトラが居ない時は、「ちゃん」付けなのだ。

ミトラ、小柄だし、ジュテリアンより四百歳ほど年下だからだろう。



         次回「ロウロイド隊長の汚名」(前)に続く





お読みくださった方、ありがとうございます。

次回、第三十四話「ロウロイド隊長の汚名」前編は、明日の土曜日に投稿します。


タイトルが少し変わりました。

自分で突っ込んだ形ですが、品がなくて良いと思います。


午後からは、「回文オチで、ポン!『続・のほほん』」を投稿します。

こちらもタイトルを変えました。

ショートショートショート形式は変わりません。

ナンセンスで意味不明で、気に入っています。

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