「フーコツの策略」(後)
そんな話をしている所に、
「幻魔捕獲!」の一報が入ってきた。
「そうか、もう捕らえたか」
少し残念そうなロウロイド隊長。
「はい。警備の一角犬が見つけてしまいまして、少し揉み合いになりました。が、当方に怪我人はなく」
と、報告に飛び込んで来た隊員が言った。
「うん? 幻魔に怪我をさせたか?」
「はい、少し」
「その幻魔は、四天王バンガウアの友だちだそうだ。きちんと回復させてから投獄するように」
「はっ」
「ロウロイド殿。ムンヌル殿を呼んで下され」
フーコツが手を上げて発言した。
「幻魔の破壊行為を問いただす、とでも言って。打ち合わせしたい事があるのじゃ」
ムンヌルさんは、
「どうしました? 何か不測の事態でも?」
隊長室に入って来るなりそう言った。
腕を後ろ手に縛られている。
「不足の事態ではないが、幻魔を捕まえてしまったので、連絡までと思ってな」
とロウロイドさん。
「ああ、ディンディンが。怪我はないでしょうね。バンガウアが怒って暴れる可能性が高い。イタズラ以外は特に力のない幻魔ですから」
「うむ。ただ今、治療中だ。完璧に回復させてから、投獄する」
と、ロウロイド隊長。
「その投獄で相談が」
と、フーコツ。
「幻魔は、束縛室とか、なるべく狭い部屋に入れて欲しいのだ」
「ああ、成程」
ニヤリと唇の端を歪めるムンヌルさん。
「「ディンディンは巨大化出来ますから、その時がくれば部屋の壁を壊せるでしょう」
「どのくらい巨大になれるのですか?」
と、ロウロイド隊長。
「気張れば、六ペート(六メートル)にはなりますね。そして丈夫です。気は弱いですが」
「六ペート?! 束縛室の壁が壊れてしまう」
ロウロイド隊長が少し大きな声を出した。
「ワシらが街道で出会った時は、確かに縦横六ペートはあった」
と、フーコツ。
束縛室は、罰の意味も込めて、狭いのだろう。
「うん。脱獄はディンディンの壁破壊を切っ掛けにしましょう」
ムンヌルさんはフーコツを見ながら、嬉しそうに笑った。
「連絡の方は大丈夫ですかな?」
と、ロウロイドさん。
「はい、看守の皆さんが、『下痢だ』『腹痛だ』と言って牢屋を空にしてくれますので、相談は密に出来ています。有り難う御座います」
「うむ。夜に、大勢の怪我人が運び込まれる演出をする。計画は変わらん」
とロウロイド隊長。
「その時、警備を手薄にするので、そこを狙って幻魔に壁を破壊して頂こう。そして一気に脱獄だ」
「ディンディンの親友、バンガウアの顔も立つ。後で、人間どもを嘲笑う事も出来る。魔族にとって、良い展開だ」
と、ムンヌルさんが笑った。
「名誉回復だな、ムンヌル殿」
フーコツも笑った。
「茶番の上の、だがな」
ムンヌルさんが、さらに負けずに笑った。
「で、風のシュクラカンスはどうする? 四散した遺体は掻き集めて、竜族の巣の近くに埋めたのだが」
と、フーコツ。
「この際、謎の黒騎士が倒した事にしてしまうか?」
その魔法使いの声に響動めく室内。
「おう。良い話だが、バンガウアにもシュクラカンスの死は聞かれてしまったしなあ。魔族に齟齬を突かれて、黒騎士の化けの皮が剥がれても不味い」
「そうだな。黒騎士に目が向けば、仲間も安心すると思ったのだが、軽率な案であった」
フーコツのその言葉で、魔族の復讐を恐れて討伐を伏せたのは、フーコツの仲間のようにぼくは思った。
「シュクラカンスの事はもう少し置いておこう」
ロウロイドさんが珍しく思案顔で言った。
「もう少し時期を見てから、シュクラカンスの亡骸を利用しよう」
「その時が来たら、いつでも連絡をくれ。シュクラカンスを掘り返しに行く。もう本人は骸骨になっているだろうが、武器の大剣も一緒に埋めた。シュクラカンスの証拠となろう」
「欲ボケしたフーコツの仲間が、大剣を掘り返していない事を祈りましょう」
と、ジュテリアンが水を差した。
「ふむ。もう三年だ。その心配もあるか。大剣自体は業物であった。シュクラカンスの死は伏せたまま、ゴルポンドに持たせても良いと思う。大剣も浮かばれよう」
と、フーコツ。
話が変わってきたが、業物の大剣を生かすには、良い話だとぼくは思った。
墓荒らしみたいだが、それは各国の国立博物館も同じである。盗掘展示会場だ。
遺物を生かす。
武器は使われてナンボじゃないのか?
次回、「大脱走」(前)に続く
お読みくださった方、ありがとうございます。
次回、第三十三話「大脱走」前編は、来週の木曜日に投稿します。
後編は、金曜日に投稿します。
「続・のほほん」は、午後からの投稿になります。
読む前に「面白くな〜〜れ」と自己暗示をかけたりしませんか?
拙者は、書く前に自己暗示を掛けます。
結果は、内緒です。
ではまた午後に、のほほん、で。




