「我、改造人間第一号なり!」(前)
魔族バンガウアへの尋問は、テント村の詰所で行う事になった。
ちなみに、バンガウアの背負っていた大荷物の中身は、本物の回復薬だった。
が、リュックの底に、四本仕様の鉤爪が隠してあった。
バンガウアがその武器を使用しなかったのは、幸運だったと言える。
今日は反撃はしないとか、ふざけた事を言ってたっけ。
どんな極秘情報が飛び出すか分からないので、参加メンバーを吟味した。そうだ。
「蛮行の雨」。三人娘と、ぼく一台。
それと、クカタバーウ砦から赴任したばかりのノッポさん。
彼の活躍? があったからこそ、バンガウアを生きて捕える事が出来たのだ。
さらに、突如として現われたテント村の責任者、モミアゲの長いおっさん。
この人、隠れていたっぽかった。
他、テント村幹部職員、数名。
捕えられた、魔王ロピュコロス軍大幹部のバンガウアは、
売店で売っていた短パンを履かされていた。
頭はスキンヘッドになっていた。
皮膚の焦げは、ほとんど落ちて、ツヤツヤの新しい肌に代わっていた。
こういう鋼なんだ。
バンガウアは、鎖でぐるぐる巻きにされ、板張りの床に転がされている。
髪の毛も眉毛も燃え落ちて、迫力のある顔になっていた。
机や椅子を隅に押しやり、尋問スペースを広く取っている。
そして、取り囲んでいる尋問メンバー。
回復などは掛けていないので、弱ったままのはずだ。
「捕虜虐待じゃないの?(ミトラ談)」
「いや、魔族だから大丈夫(テント村責任者談)」
と言う会話があった。
モミアゲ隊長の、
「さあ、魔族。何の目的で我がテント村に侵入したのか吐いてもらうぞ?」
と言う言葉に、
「クカタバーウ砦の強襲に向かった親友が帰って来ぬので、単独で情報収集に来た。親友を殺さないと約束したら、もう少し話してやらんでもない」
と応じた。
(親友? 爆炎のギューフか? もう殺しちゃったよ)
と、パニくるぼく。
同じ事を思ったのだろう、三人娘は皆、目が泳いでいた。
「もももももし、うっかり殺しちゃってたら?」
思い切りキョドって言うミトラ。
「その時は、今ここで我を殺すがよい。さもなくば、我は死ぬまで人型を殺し続けるであろう」
「念のために聞くけど、親友って、どんな外見かしら? 名前は?」
と、ジュテリアン。
「青肌で、ムンヌルと言う名だ。魔族にしては小柄だな。そこの凶悪な魔法使いと同じ位の背丈だ」
と、顎をしゃくってフーコツを示した。
その魔族の言葉を聞いて、
「だはっ!」
と大きな溜め息を吐く蛮行の三人娘と、元・砦隊員ノッポ。
そして皆んなが勢いよく喋り出した。
「元気! ムンヌルさん元気よ!」
と、ジュテリアン。
「連絡係だったみたいね、彼」
と、ミトラ。
「黒騎士様に感謝しろよ」
と、ノッポさん。
「四天王なのに、連絡係のようなヒラと親友なのか?」
と、キャンプ村の責任者。
「ははは。話の合う奴なのさ。キノコ好きでな。血生臭いギューフとは正反対だ。ムンヌルは、能力的にはほとんど非戦闘員だがな」
「うんうん。無抵抗だったから、無傷で捕えられたそうよ」
「それは良かった。ムンヌルに会えないものだろうか?」
「あーー、それは大丈夫かな? お前はクカタバーウ砦に連行するつもりだ。こんな所では、どうしようもないからな」
と、ノッポさん。
「うむ。それが良かろう」
モミアゲ隊長が追随した。
その後の尋問は、バンガウアが、
「我は魔王軍の大幹部、四天王のひとりなのであるから、正式な作法で執り行って欲しい」
との要請があったので、魔族のご指名により、メイド戦士風僧侶ジュテリアンが尋問を行う事になった。
もと居た世界では、仮面舞踏会とやらで見られる(参加した経験はないが)レース仕様のアイマスクを着けるジュテリアン。
さらに、真っ赤なハイヒール。
加えて、真っ黒なミニドレス。が、
「高貴な捕虜に対する尋問の正装」なのだそうだ。
いや、ハイヒールとミニドレスは、仮面舞踏会に対するぼくの偏見だが。
(ここは、そういう世界なんだ)
と思っていると、
「あいつ、絶対、変な所から情報集めてるよね」
と、ミトラ。
「うむ。どんなコジれた情報だ。今どき、娼館でもあのような衣類は着用せんだろう」
と、フーコツが眉をひそめた。
ミトラとフーコツがひそひそ声でそんな話をしていたので、やはりこの世界でも、アレは変な尋問用装備なんだ。
と、納得した。
その問題な衣装がテント村にあるのも、なんだか大問題な気もしたが、ぼくの気のせいだろう。
次回「我、改造人間第一号なり!」(後)に続く
次回、第二十八話「我、改造人間第一号なり!」
後編は、明日の日曜日に投稿します。
怪しき尋問が、いよいよ始まる。
魔族バンガウアの運命やいかに?!
ここまでお読みくださった方、ありがとうございました。
お疲れではありませんか?
しっかり休養を取って、明日もお付き合いください。
ではまた、明日。




