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「魔法使いフーコツの目的」(前)

「ああ。随分と凝ってますね、お(ねえ)さん」

ぼくは四本の腕、十六本の指を忙しく動かし続けた。


絶え間なく(うめ)くフーコツさん。

  「あひっ!」

         「うあう!」

「ああああっ!」


フーコツさんの声が大きいので、ジュテリアンが手で(ふさ)ぎにかかるが、

「ひゃう! 手のひらを()めてくる! く、くすぐったい!」

  と、ジュテリアンも(あえ)いだ。


がやはり、喘ぎ声ではフーコツさんには勝てない。

        「ひゃあうっ」

  「あがっ、あがっ」

「貴様、その道のプロフェッショナルだったのひい!」

       「うあん、うあん!」


「ふふっ。まだまだこれからよ、施術(せじゅつ)の本番は」

  ミトラは舌なめずりをして笑った。


が、やがて、

  「うふん!!」

(うめ)いたかと思うと大きくのけ()り、がっくりと(こうべ)()れるフーコツさん。


「あれえ? 白目剥(しろめむ)いてるよ。失神しちゃったのかな?」

  顔を(のぞ)きこんでミトラが言った。


「今日は大活躍だったものねえ、フーコツさん。酔っ払って、テーブルの上で踊り始めたりして」

  祝勝会の、それはそれは激しいブレイクダンスだった。


「メニューを途中で止めちゃイケないと思う。フーコツさん失神しちゃったけど、施術は続けて。パレルレ」

『御意!』

「もちろんだ!」


  揉みしだいていると、

「うひっ」

  と言って、フーコツさんは気がつき、頭を上げた。


  もみゅ、もみゅ、もみゅ!

「かはっ。ワシは何何何をされて」


   もっぎゅ、もっぎゅ、もっぎゅ!

「この繊細(せんさい)な辺りも凝ってますねえ」

「ひあうっ!」


ぐりっ、ぐりっ、ぐりっ、ぐりりっ!

  再び気を失うフーコツ姐さん。


  もにゅ、もにゅ、もにゅ!

「がっふん!」

  目覚めるフーコツさん。


   むにむにむにむにむに!

「がひがひがひん!」

「口を(ふさ)いでジュテリアン。うるさいから」

「えっ? 手で? それとも唇で?!」

  もみょ、もみょ、もみょ、もみょん!

「げふう!」

  失神するフーコツ嬢。


  揉みに揉み、しだきにしだくぼく。

「あひゃあっ!」

  目覚めるフーコツお嬢。


「ワシはワシは、この程度の甘美(かいかん)に屈する訳にはいかいかいかいかひィッ!」

   もみもみもみもみもみもみもみもみん!


「あああっ、もそっとあちこち!」

「あっ、()ちたわ、フーコツさん」

  と、ジュテリアン。


「ふん。これで『蛮行の雨』の正式な団員(メンバー)になったわね」

  と、ミトラ。

「以後、仲間になったんだから、呼び捨てでね」



  翌朝、

「ああっ、気分爽快だわ! 身体(からだ)(ほぐ)れて気持ち良いっ!」

  窓際で爪先(つまさき)立って、伸びをするフーコツ。


実に(さわ)やかな表情をしていた。

  何度も失神させた甲斐(かい)があったと言うものだ。


昨日のうちに、砦にも討伐ギルドの登録出張所があると聞いていたので、新メンバー、フーコツの登録に出掛けた。

  裏登録(もみしだき)は昨夜、済んでいたし。


「蛮行の雨」は、魔族から砦を奪還した黒騎士に協力した功により、ポイントをもらった。


火吹(フー)大蜥蜴(ヌイサウラー)を倒したゴルポンドさんの次に、沢山のポイントをもらえたらしい。

  砦にトンパチ突入をしたり、門を開けたりしたからだ。


しかし、勇者団ランクは、

「えーー? 下級のままなんだ」

      と、ミトラは不満そうだった。


「申し訳ありません。美味(おい)しいところは、謎の黒騎士様が持って行った事になっておりますので」

と、金青(こんじょう)のワンピースを着た受け付け嬢が申し訳なさそうに言った。

「でも、もうちょっとのポイントで中級ですから」


ぼくの個人(ソロ)討伐レベルは、下級から中級になった。

  「突入」と「門開け」が()いたのだろう。

レベルアップにともなうプレートの買い替えには、そこそこのお金を払った。ジュテリアンが。


あと、個人レベル超特級の、ミトラ、ジュテリアン、フーコツは、お金さえ出せば、

「超超級」になれるという話だったが、昇級代金が高いので、三人とも、

「必要ない」と断っていた。


  ジュテリアンは、

「宮廷僧侶時代に、お金と権力で『超超級』は取れたんだけどね、実戦不足で未熟だったから、遠慮したのよ」

  と、宮廷の闇を暴露(ゲロ)った。

「やっぱり大切なのは現場主義よね。世間に出て腕を上げ、今は『実力超超級』だと自負しているわよ」


その言葉を聞いて、ミトラもフーコツも大きくうなずいている。

  ひょっとしてウチの女性陣、超ヤバいのかも。

調子に乗って一緒に動いていると、ぼくだけ死にそうだ。


ミトラはクカタバーウ砦の伝達蜥蜴(アビソサウラー)を使って、「久しぶり」にオララ集落の親に手紙を出した。

  小型竜による空飛ぶ手紙便である。


仲友(なかとも)が出来て勇者団を作って、クカタバーウ砦で謎の黒騎士と一緒に魔族を撃退した話をまとめて書いた」

  と言っていた。

その返事は受け取れない。

  何処(どこ)を旅しているか、分からないからである。


いずれクカタバーウの魔族騒ぎは広まってゆくだろうが、

「ここからなら、三日もあれば、アビソサウラーはオララまで飛ぶ」

と言っていたから、ミトラの手紙の方が世間の噂より早くオララ集落に届く事になるだろう。



       次回「魔法使いフーコツの目的」(後)に続く



読んで下さった方々、ありがとうございます。

次回、「魔法使いフーコツの目的」後編は、明日の投稿になります。


同時連載中の「続・のほほん」も、よかったら読んでみて下さい。


回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」本編は、第一部を終了しています。

短いビキラ話を「続・のほほん」に書いていますが、もう少し長くてお話っぽいモノです。

よかったら、こちらも読んでみて下さい。

       ほなまた、明日!

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