「引っこ抜け! 伝説の棍棒」(後)
「えーー。何これ。金属が埋まってるじゃないの」
ジュテリアンが神岩に下りて来て、言った。
「神岩の正体って、金属塊?」
「もっと掘ってみよう」
ミトラはまた斧を振って、金属の見えた部分を叩いた。
がっきん! がっきん! がっきん!
「えええ?! 神岩が削れてゆく?!」
「そんな馬鹿な事が」
驚く二人の見届け警備員。
「金属板が埋まってるわね」
そこそこ掘り出してしまうミトラ。
「このプレート自体はビクともしないわ。プレートを隠していた岩は削れたのに」
「プレートの上の岩は、ただのカモフラージュだったんじゃないかしら」
と、ジュテリアン。
「削らせるために、わざと少し柔らかい岩で塞いだのよ」
「くそう。我がオララ集落の技術の結晶である太郎丸が、もうボロボロだ」
自分から始めた事だが、ミトラは後悔の様子を見せた。
「何か、小難しい文字のようなモノが刻まれているわね」
ミトラが休んだので、ジュテリアンがまた屈み込んだ。
「うん。何かと思ったら、古代ムン帝国の邪文紋字だった」
「古代ムンのジャモンモンジ? 聞いた事ないけど」
「闇精霊の呪術で使う特別な文字だから」
さらりと言うミトラ。
「ブーヨニンフの呪文なんて、もう超絶滅危惧種だし」
「なんて書いてあるんだい? ミトラ」
と、ぼく。
「ああ、うん。『伝説の棍棒は呪いで封じてあるので抜けない』んだってさ」
「呪い? 呪いで封じてあったのか、伝説の棍棒?!」
と、ノッポさん。
「それで、棍棒を解放出来るんですか?」
などと色めき立つ太っちょさん。
「うん、出来る。あたしはその、ほぼ絶滅してる闇精霊呪文を操る呪術師だから」
「おおーーー!」
と響動めく見届け隊員ふたり。
「解放の呪いを唱えるから、パレルレ、もう一度、力を貸して頂戴」と、ミトラ。
『御意』と、サブブレイン。
「分かった」と、ぼく。
そして、棍棒を掴んで引っ張ってみるが、やはり棍棒はビクともしなかった。
「そのまま引っ張っててね」
ミトラは、ぼくの居た世界でいえば、お経のようなモノを唱え始めた。
「天に在す◯◯◯(翻訳不能)よ! 地に在すXXX(解読不能)よ! 大気に在す◇◇◇(意味不明)よ!」
すると、何という事であろう。手応えが変わった!
「棍棒がグラグラしてきたぞっ!」
と伝えるぼく。
「吾れの呪いを聞き届けたまえ!」
それからミトラは、
「この世界の言葉が分かる」はずのぼくにも意味不明にして解読不能な言葉を発し続けた。
転生を司る女官の能力が中途半端だったのだろう。
仕方がない。
完全だの完璧だのはアテにならないものだ。
「今ここに、其方は解放されたり! リベラーレ! ベフライエン! ダバル!!」
小手の指を組み、呪い続けるミトラ。
引っ張り続けるぼく。
不意に、
すぽん!
と、間抜けた音を立てて抜ける伝説の棍棒。
「わっ!」
抵抗がなくなり、ぼくは勢い余って後方に転倒した。
慌てて起き上がり、天井に棍棒をかざすぼく。
世が世なら、
パンパカパーーーン!
とバックミュージックが鳴り響く場面である。
「抜けたっ!」
と、ミトラ。
「抜いちゃったわ」
と、ジュテリアン。
「大変だっ。ロウロイド隊長に知らせなきゃっ!」
ノッポさんがそう叫んで走り出し、扉を開けて去った。
「所有権は引っこ抜いた人にあるのよね?」
ミトラが、残った太っちょさんの方を向いて言った。
太っちょ隊員は、
「も、もももももちろんです!」
と狼狽気味に答えた。
「この場合は、えーーっと、棍棒を引っこ抜いた黒マントの勇者ゴーレムさんと、呪いを解いたドワーフお嬢さんの、両方に権利があるのでは?!」
肥満隊員のその返事に、フルアーマーのまま、ミトラは満足そうにうなずいた。
「場合によっては、パレルレに斧を振ってもらう事もあると思う。たぶん、あたしの方が先に寿命で死ぬだろうしね」
そう言って、ミトラは唇を歪めた。
次回「引っこ抜いたら斧だった件」(前)に続く
次回、第二十話「引っこ抜いたら斧だった件」前編。
は、在庫が出来つつあるので、来週の火曜日に投稿予定です。
後編は、水曜日に投稿します。
第二十一話「ワウフダンの援軍VS蛮行の雨」前編は、
木曜日に投稿予定してます。
後編は、金曜日に投稿しますかもです。
第二十三話「魔法使いフーコツの目的」前編は、
土曜日に投稿したい!
後編は、日曜日に投稿したいのだった。
予定通りに行くと、良いですね。




