「こんにちは! 伝説の棍棒」(後)
「簡単な仕事だと思ったのだが」
青肌魔族ムンヌルは、聞かれもしないのに喋べり始めた。
「出世が早かろうと思い、新興魔王軍に加わったのだが、やはり浅はかであったようだ……」
その魔族ムンヌルの言葉に、
「なんという下らん作戦目的だっ!」
「何人が死に、何人が大怪我をしたと思っているんだっ!」
「新参魔王は、馬鹿ばっかりか?!」
口々に怒り出す砦の警備隊員たち。
「ムンヌルと言ったな? 何故人質を取らなかった? 人質は人間の行動を鈍らせたであろうに」
と、フーコツさん。
「魔王ロピュコロス様の命令だったからな」
と答えるムンヌル。
「人間が反撃に失敗した後、倒れている怪我人や死体を回収させたのは何故だ?」
と、これもフーコツさん。
「それもロピュコロス様の命令だ」
と、ムンヌル。
「ふーーむ。ヤバいのはロピュコロスか。それともお主か?!」
と、フーコツさん。
「お主の言葉には、嘘が見え隠れする」
「………」
「ほーーら、図星を刺されて黙り込んだ。未熟者め。お姐さんが身体に縒りを掛けてたっぷり、聞き取りをしてやろうぞ」
「ああ。お願い致します、フーコツさん」
鼻髭隊長が、あっさりと言った。
そうか。ぼくらをベテラン勇者団と間違ってるんだっけ?
えーーと、非合法な所作もさせようっていうのかな?
この世界の非合法な尋問って、知らないし知りたくないけど。
「ここはワシだけで充分だ。パレルレたちは出てくれ」
と言って、フーコツさんは顎で扉を指した。
仲間のシキタリだとでも思ったのか、ぼくたち「蛮行の雨」が出て行くのを、砦の隊員たちは誰も止めなかった。
ぼくたちは尋問部屋を出て、暗い廊下を通り、二重扉を経て外に出た。
関所は、南北の通行を再開していた。
ぼくたちをここまで運んでくれたスブック商隊も、ワウフダンをめざして発つ所だった。
同行はクカタバーウまでの約束だったからだ。
ぼくたちの抜けた分は、新しい護衛を雇わねばならなかったが、魔族討伐の高揚感もあって、勇ましく吠える武人は多く、
「雇用には困らんよ」
とスブック親方は笑っていた。
別れは、あっさりしていた。
「大変、世話になった。縁があったら、また会えよう」
「またね、親方」
そうして、スブック商隊とサヨナラをした。
ぼくたちは本来の目的であった、伝説の棍棒を引っこ抜きに行った。
場所は聞いていた。
神岩に刺さった伝説の棍棒は、爆炎のギューフが「守っているように見え」た行き止まりの部屋にあった。
ギューフは本当に守っていたのだ。
扉を押し開くと、その窓のない小部屋には金青の隊員がふたり、居た。
ノッポと太っちょの凸凹コンビだった。
「あっ、あなたたちは砦に突入した?!」
と、ノッポさんは明るい顔になり、もうひとりの太っちょさんは、
「どうして此処に?」
と、不思議そうな表情を見せた。
「この部屋には、棍棒しかありませんよ」
ぼくたちが、無謀にも砦に攻め入った様子を見ていた隊員たちのようだ。
表情に親しげな雰囲気を漂わせていた。
「あたしたち、そこの棍棒を抜くのが目的で、この砦に来たから」
と、ミトラが笑って神岩に刺さった棍棒を指した。
ついに「伝説の棍棒」と、ご対面を果たした「蛮行の雨」であった。
「そ、そうだったんですか?」
「てっきり、我が砦の危機を知り、駆けつけてくれた勇者団かと」
と、伝説を護衛する二人が替わるがわるに言った。
伝説の棍棒は、部屋の中央にあった。
部屋の床は、剥き出しの地面だ。
太くなっている先の方は、神岩に埋まっているが、ごく普通の形をした、ごく普通の茶色の棍棒に見えた。
神岩の周囲が随分と掘り返されていた。
盛り土がそこここにあった。
「抜けないから、神岩ごと持って行こうとしたんだわ」
ミトラは声を上げて笑った。
しかしながら、地面から出ている神岩は、氷山の一角だったのだ。
地面が深くなるほどに、岩は巨大な裾野を見せていた。
「やはり、引っこ抜くしかないようね」
ミトラはそう言い、鼻で「ふん!」と笑って、
「パレルレ、動力炉が焼き切れるまで頑張って」
と、ゴーレムの構造を知っているような発言をした。
オララ集落にゴーレムがいたそうだから、ゴーレムの構造もある程度は知っているのかも知れない。
次回「引っこ抜け! 伝説の棍棒」(前)に続く
このような話に付き合って下さった方々、感謝致します。
次回、第十九話「引っこ抜け! 伝説の棍棒」前編。
は、明日、土曜日に投稿します。
後編は、明後日の日曜日に投稿します。
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ではまた、明日!




