「こんにちは! 伝説の棍棒」(前)
ぼくが射ち落とした伝達鳥は、鼻髭男さんが飛びついて捕らえた。
尖った尻尾を持った、そこそこ大きな鳥だった。
一人、二人と金青色の男たちが加勢をして、押さえ込んでいる。
「ゴーレム殿、あの開いている二階の窓に突入するが良い」
フーコツさんが、ぼくの背中に飛びついて言った。
首に腕を回して、自分の落下を防いでいる。
「攻撃の可能性もある。盾は全力で発動じゃ」
と言って、前面に三層の銀の盾を張るフーコツさん。
窓がさほど大きくないからだろう、出現させてから、盾を少し小さく調整した。
ぼくも側面を守るべく、左右に一枚ずつ青盾を張り、フーコツさんを真似て盾を少し縮めた。
残念だが、ぼくは全力でも二枚の盾しか出せない。
部屋の中には、鳥を飛ばした奴が居る可能性が高い。
(いや、もうさすがに逃げたはず)
とも、思ったが。
ぼくはフーコツさんのお尻を二つの手で抱え、四つの足の裏のブースターを噴出させた。
中途半端に開かれた窓が邪魔だったが、盾で窓枠と壁もふくめて盛大に破壊して、室内に突入した。
縮めた盾が、まだ大きかったのた。
床に落ち、派手に割れる窓ガラス。
窓との衝突で脆くも消滅するぼくの盾。
部屋には明かりが灯いていなかったので、
前照灯、制動灯、前部霧灯などを灯した。
フーコツさんのためだ。
彼女は「人間似の何か」らしいが、暗闇でも目が見えるとは限らない。
ぼくは、X線視覚と暗視眼で部屋の中を探索した。
部屋の隅に、魔族にしては小柄な灰色ベストの男がうずくまっていた。
青い肌をしていた。
(逃げなかったのかよ?!)
ちょっと驚いた。
こうして、クカタバーウ砦は解放された。
この一件落着の後、ぼくたち「蛮行の雨」とフーコツさんは、魔族の尋問への参加を要請された。
活躍の事もあるだろうが、どうもベテランの勇者団と間違われたっぽかった。
メリオーレスさんに書いてもらった手紙を、鼻髭のロウロイドさんに渡すと、彼は手紙を読みながら、
「メリオーレスの知り合いか。どうりでな」
と深いため息を吐いた。
意味は不明だ。
砦のあちこちが燃えたが、魔族を早々に鎮圧したので、結果オーライで許された。
砦の責任者、鼻髭のロウロイドさんが、そういう考えの人だったのだ。
「あの場合は魔族の目的も分からず、突入は急務であった」
と、話が変わっていた。
「突入、止めてたわよね、あの人」
ひそひそ声でミトラ。
『御意』
これも、ひそひそ声でサブブレイン。
「多少の被害は想定内!」
からの、
「突入部隊の死者はゼロ! これは突入の正しさを物語っている!」
と断じるロウロイド氏。
前言はどんどん撤回して、後出しで訂正してゆくタイプの人らしい鼻ヒゲ責任者。
ぼくたちにとっては、都合が良かった。
砦へのトンパチな突入が、正当化されたからである。
大剣使いのオーガ、ゴルポンドさんは、大怪我のため、尋問は欠席。
彼の治療のため、僧侶のコラーニュさんも欠席した。
尋問の直接な参加は、「蛮行の雨」と、放火と鎮火の魔法使いフーコツさん。
それと、クカタバーウ砦の責任者、鼻ヒゲのロウロイドさんとその部下数名。
尋問される側の魔族は、伝達鳥を飛ばした小柄な青肌の男が一人だけだ。
無傷なのは、「この者しか居なかった」からである。
名前は、ムンヌルと言った。
よく喋る奴だった。
伝達鳥ホーホーの回収には成功した(一羽は手紙ごと燃えてしまったが)ので、伝達内容は判明した。
「『伝説の棍棒の奪取に失敗しました』だとうっ?!」
だの、
「なんて下らない作戦なんだっ!」
だの、
「『砦の奴らは火吹き大蜥蜴にビビりまくり。人間、チョロいです』だとうっ?!」
だの、
隊員たちは憤慨していた。
「『真紅のローブを着た、短杖の魔法使いは大いに危険』だとう?!」
とは、フーコツさんの事だ。
「『闇精霊の呪術使いに、爆炎のギューフ様が倒された』だとうっ?!」
これはミトラの事だ。
その他、時候の挨拶などが若干。
「情報漏れが防げて良かった」
鼻髭を撫でながら、ロウロイドさんがつぶやいた。
「それにしてもコレクター魔王ロピュコロスの趣味を満たすための砦占領作戦だったとは。馬鹿にしやがって」
当然の事ながら、プンスカ怒っていた。
次回「こんにちは! 伝説の棍棒」(後)に続く
次回第十八話「こんにちは! 伝説の棍棒」後編は、明日、金曜日に投稿します。
第十九話「引っこ抜け! 伝説の棍棒」
前編は、土曜日に。
後編は、日曜日に投稿します。




