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「奪還! クカタバーウ砦」(前)

窓ガラスに映る赤い炎にビクつきながらも、くすぶっている地面に消火砂塵を掛けているスブック商隊の姿があった。


すでに消火作業で汗だくであったが、ジュテリアンとフーコツさんの二人は、炎の見える建物に近づいてゆく。


しかし中に仲間の戦士が居た場合、先ほどのようにお構いなしに消火泡、消火煙は射てないだろう。

  下手をすれば仲間を殺しかねないからだ。

窒息の泡であり、煙なのだから。


と思っていたが、フーコツさんは扉が半分千切れた出入り口に立ち、

「中に居る者、息を止めろ!」

  と叫んで白い泡をブッ放した。

戦っていたら、聞こえない場合もあると思うが。


そしてフーコツさんが炎の消えた建物に跳びこんだかと思うと、金青(こんじょう)の戦士や普段着の義勇兵? が何人も外に投げ出されて来た。


短剣を投げ捨て、最初の戦士を外で受け止め、よろめきながらも地面に下ろすジュテリアン。

後は、出て来るスピードが早すぎて、間に合わなかった。

地面に転がって(うめ)く戦士たちに、ジュテリアンは回復魔法を(ほどこ)してゆく。


最後に、鎧戦士(アーマーソルジャー)ひとりを抱え、フーコツさんが跳び出して来て、着地すると同時に戦士を地面に転がした。

それら泡にまみれた人たちを、今度は水魔法で洗い流してゆくフーコツさん。

回復を行っていたので、放水に巻き込まれてズブ()れになるジュテリアン。


その後、

「魔族がひとり中にいるからお願い」

とジュテリアンに言って、自分は屋根に跳び上がり、辺りの火を消し始める。


ジュテリアンは慌てて地面に投げ捨てた短剣を拾った。

  実は回復杖なのだが。

メイド風戦士と間違われているんじゃないか?


窓を割って、泡にまみれた(ふんどし)姿の巨漢が、上半身を出した。

  赤い肌の魔族(デモラ)であった。


ごぼごぼと泡を吐いているが、ジュテリアンが近づいて光る短剣をかざすと、魔族は簡単に窓から地面に落ちた。


仰向(あおむ)けになった魔族の喉に、垂直に剣を立てて、そのままトドメを刺してしまうメイド戦士風僧侶ジュテリアン。


  聞けば、攻撃は「過大回復魔法」だった。

「血流の圧迫を急激に上げ下げしたはず」

  と言う。

いわゆる「眼前暗黒感(たちくらみ)」ではなかろうか?

  魔族は目の前が真っ暗になり、転倒したのだろう。


ぼくの居た世界の医学でも、降圧剤の過剰投与で同じ症状が出るヤツだ。


ジュテリアンの過大回復魔法の弱点は、

「かなり接近しないと効果がない」

  ことだそうだ。


勢い、

「隠れて襲う」

  または、

「降参したと見せかけて近づき、襲う」

  または、

「自慢の肢体(したい)を使い、油断させて襲う」

  などの奇襲戦法になると言う。


砦の石壁回廊から落ちた魔族は、当たり所が良くて死亡した者以外は、殺されずに捕えられているようだった。

鼻髭氏(ロウロイド)さんが、

「殺すな! 殺すな! そいつらはもはや、ただの怪我(けが)人だ!」

  と叫んで回っていた。


ぼくはミトラが気になって、彼女の侵入した建物に近づいて行った。

 と、

窓ガラスが割れて太い火柱(フーポトー)が水平に噴き出した。

火球(フーバル)がどうとか言っていたが、やはり火柱を使う奴もいたんだ。

  驚いて跳び下がるぼく。


小柄な(よろい)武者が、火柱に押し出される形で地面に転がる。

  古代紫色の鎧。

      ミトラだった。


地面はたちまち火に(まみ)れたが、棍棒を持って、すっく! と立ち上がるミトラ。

  古代紫のフルアーマーに、炎はない。


鎧に掛けられた、

「炎を(はじ)く呪い」

(メラー)(ザルド)(プテ)の炎の熱を通さない呪い」

  の賜物(たまもの)だ。

恒久的に呪われたミトラの鎧なのだった。


再び火柱が窓から水平に噴き出し、避けずに受けるミトラ。

避けると、背後に火柱が走り、誰かを巻き込むかも知れないからだろう。

  そして(よろい)の表面で盛大に(はじ)ける火柱。

火勢に押され、後退(あとじ)さるドワーフの娘、ミトラ。


窓から巨大な魔族が跳び出して来た。

身の丈、三メートルほど。

(ふんどし)は他の魔族と一緒だが、ベストではなく、灰色(ラーオム)のショートコートを着ていた。


肌の色は、(ビオレータ)

  爆炎のギューフだ。

手には大振りの斧を持っている。


裸足で燃える地面に立つ巨漢ギューフ。

ミトラのような、炎を(はじ)き熱を通さない術で身を守っているのかも知れない。

  チート四天王か?! ミトラも、って事になるけど。


「ギューフ、多勢に無勢だ、降伏しろ!」

  ミトラの後方から、ジュテリアンが叫んだ。

「お前たちの作戦は、もはや失敗したのだ!」


()めるな人型(ヒューマンダ)ども!」

  ギューフは、吠えた。

「この程度、想定済みのイレギュラーだっ!」

「あたしたちのイレギュラー性を舐めてると、()ぬよ、紫のおっちゃん!」

  ミトラも割り込んで叫んだ。


「ガァッ!」

と叫び、ギューフは真っ向からミトラに斬り掛かった。

発生したミトラの紫の盾と、ギューフの紫紺の盾が激突し、相殺し合い、圧力波を生んだ。

炎が四方八方に吹き飛んでゆく。


ミトラはギューフのひと振りを棍棒で受け、そして魔族の巨体を押し払った。

  力負けをして目を()くギューフ。



      次回「奪還! クカタバーウ砦」(後)に続く






次回「奪還! クカタバーウ砦」後編は、

明日、日曜日に投稿します。


同時連載中の「続・のほほん」は、本日も投稿します。


すでに連載を終了した、

回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」は、一話読み切り形式です。

よかったら、読んでみて下さい。


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