「ジュテリアンVSロウロイド」(前)
「でもそれ、訓練用かも知れないけど、金属製の剣よね」
ビビっているのを隠さないジュテリアン。
「左様。鍛練用とて、刃はついておりませんが、重く出来ております」
その重い剣を、スラリと抜くロウロイドさん。
「しかし御安心下さい。せいぜい打ち身、悪くて骨折」
なんでもないように言う、クカタバーウ砦の元隊長。
そして、
「うん、それくらいなら。ランランカさんもいるし」
と、納得してしまうジュテリアン。
求められると答えてしまう性癖か?
それとも、魔族・魔獣の渦巻くこの世界の常識なのか?
かくて鍛練場で始まるクカタバーウ砦元隊長VS元宮廷僧侶の対決。
短剣型回復杖「無法丸」は、「絶対に使わないから」と約束して、ベルトの背面のホルスターに差したままだ。
無法丸のグリップの中には、強化アクセサリーが入っているので、手放せないのである。
強化アクセサリーや護符のたぐいは、ロウロイドさんも身に付けているので、「反則にはならない」との事であった。
対戦条件のひとつ。
「魔法は不可」なのでジュテリアンは過大回復魔法が使えず不利なようだが、ロウロイドさんも魔法剣の使い手なので不利になる、圧倒的に。
見物人は、警備隊員数名の他、ミトラ。フーコツ。
そしてオーガの戦士ゴルポンド。アマゾネス・ギュネー。六角棒使い改め五節棍使いのエルビーロ。オオールお婆さん。
さらには、岩。壁。低木。こんもりした下草。影。そこそこな屋根瓦。
つまり起動忍者部隊が見物に来ていた。
伝説の杖こと無法丸・改の渦巻部分を先にして、柄を握り上段に構えているジュテリアン。
そして渦巻き部分にある三つの水晶の内、赤いのが光っていた。
青い水晶が光ると「回復」の発動だとすでに分かっているので、赤もナニカの発動を知らせるものではないかと思うのだが、異議を唱えないロウロイドさん。
回復役の僧侶が、回復・浄化以外に何の魔法を使うのだろうか?
「あの赤い光、なんだっけ?」
と、首をひねるミトラ。
「黄色いのは、『浄化』の発動を知らせるんでしたね?」
コラーニュさんがやって来て、言った。
「ジュテリアンが何かすると言うより、魔法を封じられた伝説の杖が、なにかをする気ではないかな?」
杖仲間のフーコツが言った。
「杖が? そんな馬鹿な」
と言ったのは、オオールお婆さんだ。
ファンタジーに興味がないのか?
まだフーコツの正体は教えてなかったっけ?
ロウロイドさんは、左脇の鞘に長剣を収めたままだ。
腰を低くし、足もガニ股に開いている。
魔法が使えないので、居合いでもするつもりか?
剣を円の形に引き抜こうとすると、二の腕に隙が出来るので、小手を打たれ(真剣なら斬り落とされて)しまう可能性があるそうだ。
そこは、剣士であるロウロイドさんは百も承知のはずであろうから、斬撃に工夫を入れるはずである。
「赤い水晶が光っているが、魔法は禁止だぞ」
ようやくロウロイドさんが異を唱えた。
なんだ? 今まで我慢していたのか?
グリップに手を掛けているが、明らかにビビっていた。
「魔法禁止は分かっているわよ。なんで光っているのか分からないのよ。魔法は念じてないのに」
ジュテリアンも戸惑い、ビビっているようだった。
「打ち込めは分かるんじゃない?」
と、ミトラ。
ミトラのその言葉に背中を押されたのか、ロウロイドさんはグリップを持つ手を逆手に変え、構えを捻り、
「つあっ!」と叫んで剣を横に振った。
ひと振り目は威嚇だったが、
「ひゃっ!」と叫んで後ろに下がるジュテリアン。
さらに一歩踏み込み、返す薙ぎ払いがビビる僧侶ジュテリアンを襲った。
当たれば脇腹が大惨事!
と思われたが、足を滑らせ後ろに倒れながら、振り下ろされた杖の渦巻き部分が横薙ぎの長剣に当たり、これを折った。
杖と剣が接触した瞬間、
「がっ」と呻き長剣を取り落とすロウロイドさん。
そのまま地面に両膝を着いた。
地面に転ぶも、素早く立ち上がるジュテリアン。
「ええっと、引き分け? それとも倒れちゃったわたしの負け?」
杖を脇腹に添える回復僧侶。
「剣を落とした儂の負けだろう」
両膝を地面に着いたまま、折れて地面に転がった剣を見るロウロイドさん。
「しかし今のは魔法じゃないのか? 腰が全く入っていないひと振りで、この丈夫な鍛練剣が折れたぞ」
刀身を半分失った剣を拾い、立ち上がるロウロイドさん。
「ヒビでも入ってたんじゃないですか?」
と、見物の若い隊員が言った。
「いや、今のは杖の『物理攻撃強化』が効いたのじゃ」
フーコツが片眉を上げて言った。
「赤い水晶が光っておったろう。あれが護符と同じ働きをしたのじゃ。魔法を封じた故にな。と思う」
杖の専門家みたいな、と言うか杖が本体のフーコツにそう言われると、ぼくはそんな気がしてきた。
次回「ジュテリアンVSロウロイド」(後)に続く
次回、第百六十四話「ジュテリアンVSロウロイド」後編は、明日の金曜日に投稿予定です。
今日は団地の緑地帯にバレイショタケ(ジャガイモタケ)を幾つが見つけた。
「ジャガイモみたいやなあ」と思って調べてみたら、「ジャガイモタケ」と出てきたキノコ。
長男に言ったが、すぐには信じてくれなかったです。




