「浄化回復!」(後)
「そのうち、杖も彼女らの心と身体に馴染むであろうよ」
「うんうん。時が解決するってヤツよね」
フーコツとミトラがうなずき合った。
「杖の持ち方と気合いで、回復光の方向性もある程度決められる気がするので、伝授するわ」
と言い出すランランカさん。
「お願いします」
喜ぶジュテリアン。
ヘッドを前に出して、柄の中央と杖先の辺りを握るスタイルは、今まで通りだった。
「後は、『ブッ殺す!』という気合いで、射つ!」
「えっ?!」
「ブッ殺す! その一念で、回復光を射つ。はい」
ポン、とジュテリアンの背中を叩くランランカさん。
「ぶ、ぶっ殺ス!」
叫んで回復光をほとばしらせるジュテリアン。
太く幅のある黄金の光が、繰り返し何十本も走った。
多少は前方に走る光の帯が多いが、
物置き小屋に。
虚空に。
鍛練場の柵に。
そして周囲に屯する人間に。
訓練している者たちにもバカスカ当たっていた。
モロに喰らい、
「気持ちイイ!」
と叫んでうずくまる者多数。
「うへえ。拡散してるけど、わたしよりずっと数が多くて帯が太い。強力そうだわ」
驚くランランカさん。
そこは、女神モドキのにわか僧侶と、真正僧侶との経験の差だ。
と、ぼくは思った。
しかし、転生官上がりのニワカ僧侶にしては、ランランカさんはなかなかに見事なお手並みを披露したと思う。
物置き小屋の前にランランカさんを残し、ぼくたちはロウロイドさんたちを冷やかしに場所を移動した。
「蛮行の皆さん。よもや訓練に参加するとは言われますまいな」
ジュテリアンの回復光を幸か不幸か喰らって回復し、立ち上がっているロウロイドさん。
「昨日の今日で、そんな元気はないわよ」
と、ミトラ。
「ああ。安心しましたよ。儂も貴方がたを相手にするほどの元気はない」
「余計なお世話かも知れないけど、こんな小さな村の隊員たちを鍛えてどうすんの?」
声をひそめて言うミトラ。
「成果が出るほど、この村に長居をするわけじゃないでしょ?」
「ええ、まあそうなんですが、こういう訓練をしておれば、今後の隊員たちの気合いが違うと思いまして」
と、鼻髭を撫でるロウロイドさん。
「儂もクカタバーウの一件から気合いが入りましてな、入り過ぎて砦を辞し、今は討伐団をやっていますが、決断は間違っていなかったと思っています」
「うん。巷の街や村は救われていると思う」
「ミトラさん、そう言って頂けると嬉しいです。ゴルポンドやギュネーさんも護符の強化で気合いが入っていましてね、負けていられないのですよ」
相乗効果と言うヤツか?
それとも、ただの負けず嫌いか?
「ほどほどにね。『引き潮の海』は、ゴルポンドさんとギュネーさん以外は、そこまで強くないから」
スパッとのたまうミトラ。
そう言ってしまうと、残りの戦闘員はロウロイドさんしかいない。
「うっ、その通りです」
昨日の作戦でドラグザンの配下にしてやられ、いち早く撤退したロウロイドさんは、ミトラの言葉にうなだれた。
「しかし、強い者と鍛練しないと上達せんしなあ」
顔を上げ、長剣を鞘に戻し、腕を組むロウロイドさん。
しばし思案の後、
「よし、ジュテリアンさん! 一手御指南頂きたい」
と、言った。
「えっ? わ、私?! 僧侶よ、私」
伝説の超回復杖と、伝説の蹴撃ブーツを装備した最強の非戦闘員ジュテリアンがキョドった。
戦い慣れてはいるが、相手は戦闘のエキスパートである。
さすがに自信がないのだろう。
「過大回復魔法はナシ。その履いているロングブーツで蹴るのもナシ!」
と勝手に調子の良い話を進めてゆくロウロイドさん。
「しかし、こういう重い長剣などは不得手でしょうから、その杖は打突武器として使って頂いて結構です」
「よしっ!」
勢いで承知するジュテリアン。
背中の杖を抜き、両手で掲げるメイド風戦士僧侶。
その凛凛しさに見惚れ(たぶん)、鼻の下を伸ばすロウロイドさん。
「なんじゃ、ロウロイドの奴。非戦闘員のジュテリアンと戦ってどうしようというのじゃ」
「ジュテリアンの気を引きたいんじゃないの? 後で回復されて、快感を得たいと見た!」
フーコツとミトラが、こそこそと話し合っていた。
(髭親父、なんという下手糞なアプローチなんだ)
ぼくは感心した。
うらやましくもあった。
次回「ジュテリアンVSロウロイド」(前)に続く
次回、第百六十四話「ジュテリアンVSロウロイド」前編は、今週の木曜日に投稿予定です。
朝夕、ようやく涼しくなってきた感じ。嬉しいどす。




