表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
314/369

「魔族VS寄せ集め部隊」(後)

射程距離に入ったのだろう、剣を大上段に振りかぶるオーガの大剣使いゴルポンド。

  地面を(すべ)るように魔族に迫った。

光弾は盾が弾く。が、盾も消滅してゆく。


「オーガ如きが。させるかっ!」

振り下ろされたゴルポンドさんの大剣を払うべく、自分の大剣を逆袈裟(ぎゃくげさ)に斬り上げる魔族。


真っ(こう)に振り下ろされたゴルポンドさんの大剣は、魔族の盾を砕き、大剣を砕き、その頭部を裂いた。


  魔族、なんで正面から受けに入ったのか。

やはり「魔族」と言う自負(じふ)が、パワーを見誤(みあやま)らせたのか?

  すでに絶命したはずだから、反省の弁は聞けない。


「ゴルポンドさん、殺意全開だったねえ」

  と、ぼく。

『御意』

  あまりに早い決着に、サブブレインは残念そうに言った。


  最後に残ったのは、首領らしいチング。

しかしすでにクロスボウの矢は撃ち尽くしていた。

  最後まで、ミトラの鎧は射抜けなかった。

  

斧刃(ふじん)は出さずに棍棒を振り回してチングを追い回し始めるミトラ。

「あたしの一撃、見事受けて見せるか、おち◯ち◯ぐりぐり!」


時々、球体光弾を撃ちながら、右に左に逃げ回るチング。

「わたしはチングだ。変に名前を長くするな!」

「貴様の猥雑(わいざつ)な名前は人界に広まっておるぞ!」

「な、なんだって? チングが猥雑?!」

(人間どもが(ざわ)ついていたのは、その為かっ?!)

  と気がついたようだ。

チングの顔が(またた)く間に赤く染まった。

  魔族にも、赤面はあったのだ。

心理的な隙を突き、ついに魔族の目前に迫って棍棒を振り下ろすミトラ。


  手に持った小さなクロスボウで受けるチング。

「おち◯ち◯ぐりぐり」を口にして、思わずリキんでしまったその一撃は、盾とクロスボウとチングの脳天をカチ割った。


「ああっ、しまった。つい力が入っちゃった!」

  舌と目を飛び出させ、仰向けに倒れるチング。

地面に倒れたチングの上半身を抱き起こし揺するミトラ。

「し、しっかり! お◯ん◯んぐりぐり!」

しかしチングは、目玉と舌をブラブラさせるばかりであった。


「ご、御免。(ほふ)っちゃった」

  ヘルメットのまま、仲間を振り返るミトラ。

「どんまい。(わし)も魔族を青の閃光で捕らえたと思ったら、捕縛(ほばく)が強すぎて息の根を止めてたよ」

肩の怪我をジュテリアンに治してもらい、加勢すべくミトラに接近していたロウロイドさんが伝えた。


ぼくもミトラに近づいて行った。

  結局、何もできなかったが。

「ええ、拙僧はそのう、うっかり殴り殺してしまいました」

と、魔族が全滅したので帰って来た破戒僧エルビーロさん。

  オオールお婆さんも一緒に戻って来た。


「ふん。ワシは大水球で魔族を傷なく捕らえたぞ」

  結果オーライな話を自慢するフーコツ。

「私がいなかったら、溺死してたから」

  と、ジュテリアン。

「オレの敵も、焼き殺したと思ったら、息を吹き返したので驚いた」

  とは、ギュネーさん。


「一応、礼は言う」

とハモる焼かれ死に損ねた魔族と、溺れ死に損ねた魔族。

「負けたのに、なんだか心がすっきりした気分だ」

「オレは、スハイガーンへの心酔が、嘘のように消えてしまったように思う」

「んむ? そのせいか、この晴れやかな気分は」

  不思議そうにつぶやいている二人の魔族。


そう言えば女相撲の街で、ダイファという魔族が死にそうな目に合って、スハイガーンの魅了から解放されてたっけ。

  アレがまた、起きたのか?

ダイファの場合は、たまたまだとフーコツが言っていたが。


「溺死させるんじゃなくて、実は失神させるつもりだったんでしょ? フーコツ」

  容赦なく突っ込むジュテリアン。

「う、うむ。水球であんなに早く溺れて死にかけるとは思わなんだ。水が入ってはならん臓器に流れ込んだのかのう」

  正直にコクるジュテリアン。


「他人の生き死にに思い込みはいけませんよ、先生。オレは、最初からケシズミにしてやるつもりでした」

  爆炎娘ギュネーさんに、反省の弁はなかった。

「相手は魔族。オレらの天敵ですからね」


「スハイガーンの手下ども、変な教育をされておるのう。危なくなっても逃げんとか」

  フーコツがボヤくように言った。

「クカタバーウ砦を占拠した魔族も、劣勢になっても抵抗を続けたよ」

  と、クカタバーウ砦の元隊長ロウロイドさんが言った。

「あの時は、ロピュコロスの手下だったわけだが、野良魔族と違って、教育が行き届いていると言うべきか」


「厄介な事だ」

  ゴルポンドさんがボヤいた。

「軟弱そうなのが二人、生き残っただけだね」

  と、ミトラ。


「軟弱なんじゃありません。スハイガーンの魅了が解けただけです」

  元気な焼死未遂魔族が言った。

「野良に戻っただけですよう」

  ノンキな溺死未遂魔族が言った。


「まだ一人、残っていますよ」

  と、ぼくは報告した。

「ただの御者(ぎょしゃ)だと思っていたんですけど、逃げずに残っているんですよ。ちょっと変ですよね」


「奴か」

  ゴーグルを(ひたい)に上げていたフーコツが、目まで下げた。

「馬車から降りて、雑木林に入ろうとしておるのう」


「儂ら全員を相手にすると言うのか?」

  と、ロウロイドさん。

「仲間のヤラレっぷりは見ただろうに。面白い奴」

  と、ゴルポンドさん。


「五神将のひとり、ドラグザンですからね。自信過剰なイカレた奴ですよ」

「俺らはあいつに誘われて、スハイガーンの魅了に(とら)われたんだ」

「まあ、衣食住の保証をすると言う甘言(かんげん)に負けたんですけどね」

「さっきまで命は惜しくなかったもんなあ、魅了って恐ろしいよなあ」

  運良く生き残ったコンビが、のんびりと話し合っていた。


「雑木林を歩いて来るけど、『死体を返して来れ』って言う交渉じゃないの?」

  と、ジュテリアン。


「それはないよ、お嬢さん」

「三度の死より戦いが好きな奴だから」

「じゃ、俺たちはこれで失礼するよ」

「巻き()えを食って死にたくないんでね」

ヘラヘラと、幸運な生き残りコンビが言った。


「さっきまで我々を殺そうとした者が、調子の良い事を言うな」

  ロウロイドさんが(しか)った。

「最後まで居てもらうぞ。色々と聞きたい事もあるからな」

  魔族は残念そうな顔になったが、黙ってうなずいた。


「もし、遺体返還要求なら、武具、護符をすべて()いてから返してやろう」

  (あご)()でながらフーコツが言った。

「そんな屈辱的な条件、魔族が承知するわけないじゃん」

  ミトラが断言した。


「先生、(フー)(ダイヤ)で攻めますか? それとも(フー)(ナフル)にしますか?」

  と、ギュネーさん。

「それではワシら以外が全員死んでしまうぞ。この雑木林もな」

  と応じるフーコツ。


「この雑木林はもうダメですよ。人型(ヒューマンダ)が生き残れれば、それで良いんじゃないですか、先生」

「うん? ギュネーよ、『引き潮』の男性(オス)どもと一緒に暮らしていて、変な価値観が伝染したか?」

「うーーん。そうかもしれません、先生」


人間なら、人間主義で良いのだろうが、フーコツは人間似のナニかだから、樹々や下草も気になるのかも知れない。



           次回「五神将ドラグザン」(前)に続く



次回、第百五十八話「五神将ドラグザン」前編は、明日の土曜日に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ