「報奨金の内訳」(後)
「では、せっかくであるから、中身を改めさせてもらおう」
麻袋の一番近くにいたフーコツが手を伸ばして、口紐を解いた。
絞られていた袋の形が崩れ、ジャリリと音を立てた。
「むう。すべて金貨ではないか」
驚くフーコツ。
立ち上がって覗き込み、ミトラとジュテリアンが息を呑んだ。
「ちと多くないか?」
フーコツがナズバンス隊長を見上げた。
「公共施設の金貨を掻き集めました。なあに、後で同額の金貨を国から頂けますので、お構いなく」
胸を張るナズバンスさん。
「だから街が逼迫する事はありません。我らの精一杯の気持ちです」
「では、気持ちだけ頂いておこう」
麻袋を引き寄せ、口を結び直すフーコツ。
「チャビム警備隊には、この金で良い護符、良い補助武器を購入して、自分たちを強化して欲しい」
麻袋をナズバンス隊長の前に押し返した。
「あ。やっぱり……」
ルバイさんからぼくたちの気持ちは聞いていたのだろう、さして驚かないナズバンスさん。
「しかしそれでは、報奨金を運んで来た我々の立場がありません」
臭い? 芝居を始めるナズバンス隊長。
周囲を見れば、聞き耳を立てている様子の客や従業員が見えた。
「強くなって、ワシらが困った時に助けて欲しいのじゃ」
フーコツも負けずに三文芝居? をした。
「これは、『持ちつ持たれつ』じゃ」
「大勇者サブローは、『ギブアンドテイク』とも言ってるじゃん」
「な、なるほど。今回の見返りを求められるとおっしゃるのですな?! それは是非もない」
と、横に立つルバイさん見るナズバンス隊長。
「助っ人など、当然至極の行為。なあ、ルバイよ」
「えっ? ええ、その通りですが……」
口ごもるルバイさん。
たぶん、
(助っ人は良いが、そんな時が来るのか?)
とか思っているろだろう。
その通りだルバイさん。「そんな時」は来ない。
でも、これは芝居なんだから、別に良いのだ。
「先に手紙を書いておいたが、今のやり取りも書き加えておこう」
と、真紅のローブの胸元に手を入れ、巻き紙を取り出すフーコツ。
「これを『上』に渡し、納得して頂こう」
巻き物を広げるフーコツ。
「その時、ナズバンス隊長は……」
とかブツブツ言いながらペンで書き足してゆくフーコツ。
胸に手を当て心配そうに見ているナズバンスさん。
「うむ! 出来たぞ」
自信満々の顔で巻き物を巻き直して渡すフーコツ。
ルバイ、ナズバンスの二人の不安そうな顔が気になったのだろう、「えーーっと」と、話し始めるミトラ。
『報奨金が出る』と言う話は聞いていたから、『あたしたちには必要ありません。それよりもそのお金で警備隊の装備を強化して、街の助けになって下さい』と言うような手紙です。あたしたち四人の署名もあります」
「『そしていつか、ワシらを助けるように』とも書いたぞ」
と、フーコツ。
芝居もそろそろ頃合いと見たのだろう、
「かたじけのう御座います。ボーナスを足して、上の上をめざすぞ、儂は」
と言い、ナズバンス隊長がルバイさんの手を握った。
「はい。念願の強化護符を手に入れる事が出来ます!」
ルバイさんも欲望を白状した。
「いやしかし、これで良いんでしょうか?」
なぜか我に帰るルバイさん。
真面目、いや厄介な人だ。
「『上』がこの強化話を認めてくれるでしょうか?」
「そのための手紙ですが、この訴えが認められなければ、お金は街の積み立て金に加えて下さい」
と、ジュテリアン。邪気はない?
「そうして、橋を造るとか、老朽化した建物を補修するとか」
と、ミトラ。無邪気か?
「学校を建てるとか、回復院を建てるとか」
と、フーコツ。
お金が有効に使われるなら、それでも良いんだ。
「ううっ。その方が良いのでは? ねえ、ナズバンス隊長」
と、弱気になるルバイさん。
「い、いや、蛮行の皆さんは我々の強化を望んでおられるのだぞ!」
わっし! とルバイさんを抱きしめて説得を始めるナズバンス隊長。
「我々が強くなる事が街のためであり、そしてゆくゆくは蛮行の皆さんをお助けすると言う一大使命に到達するのだっ!」
言葉の端端に必死をほとばしらせるナズバンスさん。
「我々は強くなるのだ! 強くなってより勇ましく街を守り、いつか蛮行の皆さんに今回の恩返しを致しますのだルバイくん!」
一応、ナズバンス隊長の説得は功を奏したらしく、ルバイさんが、
「強くなるぞーーー!」
と、言い始めた。
そしてぼくたちは報奨金を返し、ナズバンス隊長とルバイさんに見送られて、チャビムの街を発ったのだった。
ぼくの収納庫には、宿屋の好意がてんこ盛りになった御弁当が三つ、入っていた。
次回「シャショナ村の出会い」に続く
次回、第百五十二話「ショシャナ村の出会い」前編は、明日の金曜日に投稿予定です。




