「到着! クカタバーウ砦」(後)
「戦闘時の死亡の恐怖に比べれば、あの程度のカイカン、なんでもないわよねえ」
と、ミトラ。
(そ、そうか、やっぱりカイカンを伴っていたのか)
(しかし、疲労が取れ、さらにカイカンが付いてくるのなら、一石二鳥、一挙両得ではないか)
(よし! 今夜も施術を頑張ろう!)
宿屋の部屋に戻り、
「今日はあんまり疲れてないから、ソフトタッチで良いわよ」
「そうそう。あたしも野盗の首領をボコっただけだから。優しめでね、パレルレ」
と二人が言うので、そのようにした。体感だが。
ミトラもジュテリアンも、自分の手で唇を塞いで、施術に耐えていた。
それでも、
「んが、んが」とか、
「ひい、ひい」とか、
「あう、あう、あうぅ」と言う声が漏れていた。
ひょっとして、ぼくの技術が向上しているのだろうか?
ひょっとして、これは魔族にも通用するテクニックなんだろうか?
ぼくは千千に思考を乱しながら、四本の腕、十六本の指で彼女らを喘がせ続けた。
翌日は、何事もなく街道を進んだ。
夜も、施術でジュテリアンを失神させた以外は平穏に更けた。
その翌日も大事なく道を進み、今度はミトラが施術で失神したが平静に夜は過ぎた。
そのさらに翌日、村を過ぎ街を過ぎ、昼過ぎにはクカタバーウ砦に辿り着いた。
しかし砦まであと二百メートルという所で、商隊は停止を強制された。
クカタバーウ砦は折もおり、魔族に占領されていたからである。
当然の事ながら、馬車を降り、様子を見に行く「蛮行の雨」。
「今度は砦の奪還かあ。こりゃあ、夜の施術が大変そう」
と、鎧の腰を撫でるミトラ。
「ミトラっ。なんで今、それを言うかっ!」
耳を赤くして叱るジュテリアンだった。
通行止めをしている金青色の革製鎧を着た兵士たちが、
「すでにワウフダンに援軍を頼んでいます」
「今しばらくの辛抱を」
などなど叫んでいる。
「砦は必ず我々が取り戻します!」
と、力強く叫び回っている、
「鼻髭にがっちりした体格の男」が居た。
メリオーレスさんに聞いていた、
「砦の隊長、ロウロイド氏」の容貌と一致した。
が、今は取り込み中なので、挨拶は後回しにした。
「あの金青たち、胸に『クカタバーウ』って書いてあるわね」
「魔族に砦を追い出された兵隊さんたちだ。大変ねえ」
などと、人だかりの後ろで話し合っていると、大剣使いのゴルポンドさんが近づいて来て、
「よう。突入するんなら、オレも混ぜてくれよ」
と煽った。
さらに、
「吾輩は奪還後の治療に専念するので、お見送りのみです。行ってらっしゃい」
と、黒ローブの僧侶、コラーニュさんも煽った。
砦は三十メートルほどの、石造りの壁に囲まれている。
(あれくらいなら、大ジャンプで越えられるな)
と、ぼくはイメージトレーニングした。
金青兵によって空けられた二百メートルほどの「立ち入り禁止区域」に、
岩。
矢。 血溜まり。
水溜まり。 杖。 剣。
大剣。 槍。 斧。
焼け跡、の数々があった。
魔族との戦闘の残滓だろうが、派手にやり合った様子なのに、死体も、えーーっとその、人体の破片もない。
すでに突入を敢行したらしい人々が、群衆の後方で地面に横たわっている。
格好からして、戦士や魔法使いだ。
僧侶たちの懸命な回復治療が見える。
石壁の向こうに回廊が付いているのだろう、「魔族」が、灰色ベストを着た上半身を見せて、五、六人が右に左に動いている。
大振りの弓を持っているのが分かる。
太いベルトを肩から斜めに掛けている。
そして、肩から矢の羽根が見えている。弓使いだ。
おそらく魔法で強化された矢を射つのだろう。
その、回廊を行き来する魔族どもはしかし、光の盾を出現させていない。
光の盾は出しているだけで、スタミナと魔力を消耗するので、発動は「いざという時」なのだろう。
肩幅が広くてたくましい。
肌の色は、青、赤、黄など数種類。
皆、猫背だった。
熱感知眼で見ると、人間より放射熱が高い事が分かった。
体温が高いのだ。
しかしこれは、人間の目では分かるまい。
ガンマ線視覚で、いずれも骨太な構造なのも分かった。
頑丈そうだ。
そこへ、情報収集を終えたスブック親方と、お付きの美女たちが帰って来た。
次回「見参! メラーローブのフーコツ」に続く
お読みくださった方、ありがとうございます。
次回第十五話、
「見参! メラーローブのフーコツ」前編。後編。
は、明日の投稿となります。
なお、来週から、今の週三話の投稿から、週二話の投稿になります。在庫が思うように出来ませんので。
木曜日、前編。金曜日、後編。で、一話。
土曜日、前編。日曜日、後編。でもう一話。
になる予定です。
ではまた明日、「召しませ!(中略)ですか?!」第十五話と、「続・のほほん」で!




