「到着! クカタバーウ砦」(前)
翌日も当然、スブック商隊の護衛をした。
回復院に入院してしまう者(入院費は仲間の寄付だ)が若干名出たり、目的地の関係で護衛を抜ける討伐団もあったが、スブック親方は代わりを雇わなかった。
「あなたたちが居れば大丈夫。オーガの大剣戦士も加わってくれたし」
と、言うのだ。
確かに、ゴルポンドさんその他も同行するので、戦力的には、抜けた人の分も充分カバー出来ていると思う。
ぼくたちの目的を言うと、
「なに? クカタバーウ砦へ伝説の棍棒を引っこ抜きに行くだと?」
「棍棒? この時代に棍棒?! エレローブのコラーニュを、ここまで笑わせるとは」
と、大剣使いのオーガと、旅の僧侶にはウケた。
ぼくたちは、街道を塞ぐ水吹き大蜥蜴や、丘に寝ているだけの火吹き中蜥蜴などを、頼まれて退治しながら進んだ。
ぼくは大ジャンプやロケットダッシュの練習を兼ね、跳んだり跳ねたりして、ゴルポンドさんを感心させたり、スブック親方を喜ばせたりした。
残念なのは火吹き系トカゲだ。
絶滅は近いように思われた。
飼い慣らすにしても「火吹き」が危険だからだ。
「必ずや殺してくれ!」
「卵があったら、取って来てくれ。後で食べよう」
と、スブック親方も随分気合いが入っていた。
二角黒馬に乗った野盗団にも襲われた。
「よう、スブック。気が効くじゃねえか。上玉を持参とはよう」
野盗団の首領らしい髭男は馬上から笑ったが、
「馬鹿め。今日が貴様らの命日だ」
と、上玉のジュテリアンに守られて、親方は放言した。
「了解。ヤっちゃって良いのね?!」
ミトラが棍棒に斧刃を出し、確認すると、
「あっ、すみません。カッコつけました。出来るだけ生け捕りで」
と訂正する親方。
「ちぇっ」
と言って刃を引っ込める古代紫の小娘。
「小っこいの、舐めてんのかオレらを。てめえに何が出来るって言うんだ」
と言う首領の声に被せてぼくは足の裏のブースターを噴かして空中に跳んだ。
同時に胸から高熱鞭を出し、馬や野盗どもに当たらぬように振った。
馬たちはぼくの蛮行に驚いて暴れ、人間を振り落として逃げてゆく。
落馬した野盗団に襲いかかる商隊の護衛たち。
勝敗はすぐに決したが、親方の言った「生け捕り」を愚直に守ろうとした者が数名、負傷した。
野盗団は激しく抵抗したため、半数の四名が死亡した。
野盗のボスはミトラに盾を砕かれ棍棒で殴られ、頭に鏡餅のような巨大な瘤を拵えて気を失っている。
商隊や野盗団の負傷者は、ジュテリアンや黒ローブのコラーニュさんたちの回復魔法で、大事にならずに済んだ。
ところが、スブック親方は、
「野盗にも家族がいるのだぞ」
と説教を始めた。
するとオーガの大剣使い、ゴルポンドさんが眼を険しくして、
「オレたちの命はどうなっても良いのか?!」
と言い返した。
スブック親方はそれで黙った。
そして、先頭の幌馬車に帰って行く。
「野盗は生け捕りにして警備隊に売った方が金になるからな」
と、ゴルポンドさん。
「言い返してくれてありがとう」
と言ったのはジュテリアンだ。
「親方に気に入られていたもんだから、良い子ぶって黙っちゃったわ」
「まあそれが普通だろうよ。オレは一匹ダヌキで失うもんがないからな」
とゴルポンドさん。
(この世界にもタヌキが居るんだ)
と衝撃を受けるぼく。容姿は知らないけど。
「それにしても、あんた美人なのに正直なんだな」
と笑うゴルポンドさん。
「全くだ」
とコラーニュさんも笑った。
「そんなので、よく溝泥のこの世の中を生きてこれたもんだ」
「言いたくても言えなかった事を代弁してもらって、嬉しかったわ。今夜も私たちの部屋に来て頂戴 」
と、ジュテリアン。
「そうそう、たっぷりお礼をしなくちゃ」
と、ミトラが笑った。
「い、いや、今日はそんなに疲れてねえ。要らないよ、また今度な」
アラレもない悶えをうら若き女性に見られて、懲りた。
と言うか、恥ずかしくなったのかも知れない。
ゴルポンドさんもコラーニュさんも、揉みほぐしをキッパリ断って去った。
「なによオスども、だらしないわねえ」
何故か勝ち誇るジュテリアンであった。
次回「到着! クカタバーウ砦」(後)へ続く
次回、「到着! クカタバーウ砦」後編。
は、今日の午後に投稿します。
よろしかっら、読んでみて下さい。
週三話の投稿は今週で終わります。
来週からは、週二話投稿になります。
木曜日、前編。金曜日、後編。で、一話。
土曜日、前編。日曜日、後編。で、もう一話。
在庫に余裕が出来たら、数を増やしたいです。




