「参上! ゴルポンドとコラーニュ」(前)
片目を潰され、腹を裂かれ、両ふくらはぎの内側を斬られてもなお、荒地大蜥蜴は立ち上がって猛猛しく吠えた。
「ちっ。さすがにタフね」
ミトラが舌打ちをした。
そんな所へ、遠巻きにしていた商隊の、他の護衛メンバーが唸りを上げて加勢に来た。
ぼくたちの戦いを見て、
「イケる!」と思ったのだろう。
「なるべく傷つけない方向で」は、ミトラとぼくの攻撃ですでに反故にされてるし。
そうだよね、やっぱりネックはそこだよね。
難しかった枷が外れたのだ。
後は数の理論でなんとかなりそう。
だが、ヌイサウラーの吐く岩に、光の盾を砕かれ、モロに喰らって倒れてゆく加勢戦士たち。
射速は馬鹿に出来ない。
スピードはそのまま凶器だ。
生身の頭になど当たったら、たぶん即死。
腕や足に受けたら骨折は免れないだろう。
ぼくは金属体、ミトラは呪いの鎧のお陰で、人外に頑丈なのだ。
「パレルレ、行くわよ!」
ぼくは再び間を詰め、ヌイサウラーの気を引いて岩を受けた。
ボディを欠損させる事はなかったが、ぼくの青の盾は、やはり容易く破壊された。
岩弾が強力なのだ。
間隙を突いてヌイサウラーに迫り、足を攻撃する者も出た。
大剣使いのオーガだった。
オーガ戦士って、商隊にいたっけ?
『否』
と答えるサブブレイン。
そうだよね。何処から来たんだ?
弓使いは混戦状態なので、誤射を恐れているのだろう、傍観の態だった。
ぼくも危なくて鞭が打てなくなった。
やがてヌイサウラーが空射ちを始めた。
岩弾が尽きたのだ。
そして多勢に無勢。
蹂躙状態になった。
荒地大蜥蜴の皮は、随分ズタボロになってしまったが、無事に倒された。
商隊の親方、スブックさんは、
「良いモノが見られた」と上機嫌だった。
死人は幸いにも出なかったが、怪我人は多く、商隊付きの僧侶と、たまたま通りかかった旅の僧侶、そしてジュテリアンは汗だくの治療行為となった。
ヌイサウラーの討伐だが、ぼくたちが戦っているのを見て、
「何か事情があるようだ」
と、褒美の事を知らずに加勢をした旅の武人もいたのだ。
オーガの大剣使いがそうだった。
加勢の中で、一番最初にヌイサウラーにダメージを与えた武人である。
その二メートルを超えた、鎧の代わりに焦茶の毛皮を着たオーガ戦士は、そのまま商隊の護衛に加わった。
「街の回復院で本格的な治療をしないと駄目だ」
と言う怪我人もいたので、護衛が減るのを嫌って、親方のスブックさんが雇ったのだ。
「光の盾がなかったら死んでいたところ」
と言う人もちらほら居たそうだから、盾は気休めではなかったらしい。
ただし、ヌイサウラーを倒した報奨金となると、親方は出し渋った。
明らかに「漁夫の利」を狙った「戦う振りをしただけ」の者が居たからだ。
ミトラが、
「あたしとパレルレの取り分が減ってもかまわないから、皆んなに特別手当てを」
と申し出たので、スブック親方はボーナスを出した。
(ミトラ、甘いよ。「しめしめ」とは思っても、仲間のジュテリアンは別にして、誰も君に感謝などしないぞ)
と、ぼくは思った。
次回「参上! ゴルポンドとコラーニュ」(後)へ続く
「参上! ゴルポンドとコラーニュ」(後編)は、今日の午後に投稿予定。よろしかったら、読んでみて下さい。
今週は、今まで通り「週三話」を投稿しますが、来週から「週二話」の投稿にします。
在庫がすぐに無くなりそうだからです。
「続・のほほん」と言うショートショート形式の話を、一話完結で投稿中。
回文をオチに使っているので、クセがあるかも。
ぼくは好きですが。




