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「グーノングの災難」(後)

  そして、

「こんな事もあろうかと、野営の準備はして来た」

  と、胸を張るポーガンス隊長。


そんな訳で、ぼくたちも騎馬隊と一緒にトンネルの前で一夜を明かす事になった。

  ()き火を囲む「蛮行の雨」とグーノングさん。


機動忍者部隊の七人と、オオールお婆さん、マークンドラおばさんは、警備隊の聴き取り調査を受けている。

ランランカたちはシッカリと()れていたので、前方のみならず、周囲にも焚き火を焚いてもらっていた。

これだけ明るいと、魔獣も近づいて来れないんじゃないだろうか?


「ううっ。もう何日もお風呂に入っていなくて……」

ごはんは(ほろ)馬車にに揺られながら食べたが、街に到着しても入浴は我慢して先を急いだのだ。

身体(からだ)がちょっと、ネトってしてる気がするんですけど」

  と、ボヤくミトラ。


「警備隊の皆さんが食べ物を分けてくれたんだから、それで良しとしましょう」

  と、ジュテリアン。

「お嬢さんがた、もう少しの辛抱(しんぼう)です。明日には間違いなく解放されるでしょう」

  と、グーノングさん。


グーノングさんには、「友人を助けるために急いでいる」と言ったので、お風呂返上で急ぐのは当然、と思っているだろう。

  実は、「伝説の杖を他人に取られそうなので、そうはさせじと急いでいた」のである。

  そして結局、杖は他人にあげてしまったのである。

ぼくらはひょっとして、ただのお人好しか?


でも、(とら)われの村人(ぼうけんしゃ)たちを解放したんだから、ここは、結果オーライだろう。

  あらかた、昇天してしまったが。


「『探索は明日にすべき』と進言したのはワシらであるから、気にする必要はない。グーノング殿」

  と、フーコツ。

そしてまた、施術(せじゅつ)のない(おだ)やかな夜が()け、静寂のうちに夜が明けた。


三人娘とランランカたち、グーノングさんも(ふく)めて、朝食も頂いた。

  昨夜と同じく干し肉、干しパン、干し果実であった。

非常食だろう。


「いざ、参ろう!」と言うポーガンス隊長の意気込みに反して、心配していた落とし穴に皆んなでチラホラ落下しながらも、調査は粛粛(しゅくしゅく)と進んだ。


ぼくたちの集めたタグと、白骨のタグを合わせ、武器と白骨を寝袋に(くる)んでゆく警備隊。


「す、凄い。白骨死体を寝袋に入れてる……」

「まとめるには、良い作戦じゃ」

「でも、足りないよね。白骨死体、多いもの」

「しっ。ワシらの寝袋は貸さぬ方向で」

「だ、だよね……」

  ミトラとフーコツが、ヒソヒソと話し合っていた。

ジュテリアンも同じ思いなのだろう。コクコクとうなずいている。


  一方、様々な衣服が、各家屋から見つかった。

革鎧(レザーアーマー)や、金属鎧(メタルアーマー)、毛皮、ローブ、鎖帷子(くさりかたびら)などの冒険者の装備だ。


「燃やして処分したりしなかったのじゃな」

「本人たちの意思は失われてたんだから、『伝説』の仕業(しわざ)ね」

  と、ランランカ。

「村の外に買い物に出る時に、使ったのよ。吾輩たちも、そのうち使い走りに使われたかも」


冒険者の服装なら、(あや)しまれずに買い物が出来ただろう。

  歳月の関係か、ボロいのばかりだったが。


(あわ)れな『伝説』であったのう。アレも古代神に(あやつ)られておった訳じゃからな」

「そ、そうか。ムカつく神よね」

「ででででも、神々と戦うほどのチカラはないわよ、貴方(あなた)たちも吾輩らも。たぶん」


「『伝説』を解放してゆく。それが私たちの精一杯の反抗かしらね」

  と、ジュテリアン。

「てっ、天罰とかイヤなんですけど」

「天界人のハシクレであろうが、ランランカ。しっかりせい」

「生まれと環境が違うだけで、一皮剥(ひとかわむ)けば、天界人も下界人も、ほぼ同じだから」


「神もか?」

  と、フーコツ。

「大きな声じゃ言えないけど、『不死の(やまい)(おか)されたイカレ種族』だから」

  声をひそめ、身を(かが)めて言うランランカ。

言ってしまってから、

「わあ、どうしよう! 言っちゃった。天罰が下るかも?!」

  と、両手で頭を(かか)えるランランカ。


「天罰が下るなら、話を聞いたワシらも今、皆殺しにされたはずじゃ。気にするな」

  と、フーコツが笑った。


そんなぼくたちの罰当(ばちあ)たりな雑談を、黙って聞いているオオールお婆さん、マークンドラさん、機動忍者部隊、そしてグーノングさん。

  さて、ランランカの正体をどの程度まで信じたか?

皆さんの心中(しんちゅう)までは分からないが、平民のグーノングさんなど、あぶら汗を流している。


「エラい事、聞いちゃったよ」

  ぼくとジュテリアンの間に入って(ささや)いた。そして、

「あの、あの」

  と、ジュテリアンの(そで)を引くグーノングさん。

「今の話、黙っていたら、天罰、当たらないですよね?」


「はい。黙っていたら、大丈夫ですよ」

  あっさりと応じるジュテリアン。

確かに、しのごの言っても仕方がない。

「墓場まで持って行って下さいね、グーノングさん」


土産(みやげ)品の「うなずき人形」のように激しく頭を上下するグーノングさん。

     災難でした。ごめんなさい。



             次回「奇奇怪怪族」(前)に続く



お読み下さった方、ありがとうございます。

次回、第百十ニ話「奇奇怪怪族」前編は、明日の金曜日に投稿します。


読み切りショートショート集「のほほん」「魔人ビキラ」など書いております。

よかったら、読んでみてください。

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