「めざせ! アレドロロン」(前)
ギルド内の違う受け付けに行って、ぼくたちはもう一度、ランランカを確認する事にした。
「白き美女」の容姿をたずねると、
「頭領は肌も髪も衣服も白い、大層な美人さんだったよ。黒装束の忍者六人は、ありゃ完全に下僕だな」
思い出したのか、ニヤつく若い受け付けの男。
やはりランランカ一党で間違いないようだ。
「その白い女の人、アクセサリー過多だったでしょ?」
さらに念を入れて確認するジュテリアン。
「アクセサリー? いや、指輪もイヤリングもなかったぜ。大きな白杖と、小さなカバンを下げてたな」
カウンターの向こうにオッサンがひとり現れて、
「そうそう、真紅のバッグを斜め掛けしてたな」
と、言った。
「どうしたんだろ? 自慢げにアクセを身に着けてたのに」
と、小さな声でミトラ。
「アクセは、その肩掛けバッグに入れたのじゃろう。『身に付けていると狙われるぞ』と言う誰かの入れ知恵を、受け入れたのかも知れんな」
と、ヒソヒソ声でフーコツ。
「そうね。戦ってみて分かったけど、アクセ頼みの鍛練の足りない人だったから、アクセを手離すのは考えられないわね」
と、コソコソ声でジュテリアン。
「で、その忍者部隊だけど、アンデッドを討伐した後、何処へ行った知らない? おっちゃん」
と、声を張るミトラ。
「強力な武器を求めてたなあ。『アンデッドを退治してやったんだから、なにか教えてくれ』って言われたよ」
と笑うオッサン職員。
「アレドロロン村に伝説の攻撃杖があるかも知れない、と言う噂話を教えると、『行ってみるか』とか言ってたなあ」
と若い職員。
「十日ほど前の話だよ」
「近在の街や村と交易がない村なんで、止めとけって言ったんだがな、『どうしても攻撃杖が欲しいのよ』と言い返されちまった」
と、オッサン職員。
「アレドロロンの伝説は、今の女神・男神の時代より古い滅びた神の伝承だそうだからな、怪しいんだよ。存在も中身も」
「ああ。今の神々に支配される前の、土着の神の伝説かのう」
と、フーコツ。
「滅びた古宗教の神々なんか、よく知らねえからな」
と、オッサン職員。
「だいたい、村はもうとっくに廃村になってるかも知れん。交易話なんぞ、とんと聞いた事がないからな」
「えーー? ヤバいの? 古宗教の神々?」
若干キョドる絶滅危惧種的闇呪術師ミトラ。
「よくわからない分、ヤバいと思う」
と、若い職員。
「その忍者部隊は知り合いなのだ」
と、手を上げて言うミトラ。
「心配だ。探しに行こう」
と、絶滅危惧種的光呪術師フーコツ。
自分たちの目的「二度とぼくを狙わぬようにボコる」を隠してそう言った。
「あんたらも気をつけなよ」
ランランカを止めたというオッサンが、ぼくらの事は止めなかった。
「探しに行く」と言ったからだろうか? たぶんそうだ。
「『怪しい、危ない』と思ったら、迷わず逃げるんだぜ」
と、念を押すオッサン職員。
討伐ギルドを出ると、
「なによ、滅びた土着の神に対して、完全に地域差別じゃないの、アレは!」
差別されてきたであろう闇呪術ミトラが不満を述べた。
「まあそう言うな。分からないモノは怖い、という話であろう」
差別されてきたであろう光呪術師フーコツが苦笑した。
「すでに伝説の杖はランランカに取られて、手遅れかも知れないけど、急ぎましょう」
ジュテリアンが焦れた声を出した。
「忍者部隊が、目覚めた古神に囚われてしまった可能性もゼロではないし」
と言うわけで、
「ミトラ、フーコツ、早馬車で行きたいんだけど、良いかしら? 持ち金が一度に減っちゃうけど」
「あーー。馬車を乗り継いで夜通し走るヤツ。オッケだよ」
「金庫番のお主が考えたのなら、何も問題はない。それで行こう」
単に早馬車に乗りたかっただけかも知れないが、ミトラとフーコツは賛成した。
ピクアナイトの貸し馬車屋へ行き、早馬車を頼んだ。
前払いのお金は「弾んだ」そうだ。
理由は、
「アレドロロン村に行った友人を連れ戻す」
にしたので、何も問題はなかった。
すでに「アンデッド殺し」として街で名を馳せていたランランカ一党を助けに行くのである。事にしたのである。
行き先が、悪名高き? アレドロロンだったので、貸し馬車屋のマスターには、
「それはさぞかし御心配でしょう」
と同情されたくらいだ。
「誰もあの村には行きたがりませんからな」と。
「伝達蜥蜴はすでに飛ばしましたぞ。次はムリマの馬車屋まで走ります。そこで御不浄に行かれるがよろしかろう。いや勿論、途中で馬車を止めて茂みで出されるのも、致し方ないでしょう」
マスターは、色々と親切だった。
「便秘気味ではありませんか? 大丈夫ですか?」と。
そして三人娘は「余計なお世話」とも言わず、
「さし迫ったらそう致します」などと礼を述べて、馬車に乗り込んだのだった。
次回「めざせ! アレドロロン」(後)に続く
次回、第百四話「めざせ! アレドロロン」(後)は、明日の日曜日に投稿予定です。
読み返しましたが、街を乗り継いで進むので、街の名前が次々と出て来て、バタバタします。
わたしは名前を覚えていなかったし、覚えられませんでした。
だから、あなたも気にしないで下さい。
ではまた、明日。




