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「ランランカ再再再登場」(前)

「パレルレ、やっておしまい」

  と、ラナハさんを指して命ずるフーコツ。


ミトラは、護符の束を、三つのベッドの枕元に無造作に置いてゆく。

  ぼくは、

(それ、キミたちの『命』だよね?! なんて雑なあつかいなんだ)

と思いつつ、ぼくはベッドに上がって四つの手でラナハさんを()み始めた。


ラナハさんの右腕はフーコツが、左腕はジュテリアンが(すで)に押さえ込んでいる。


「うはっ!」

  と(あえ)ぐラナハさん。

「奥様のために、明日は元気一杯で帰ってもらうのじゃ」

  と、フーコツ。


「ひいっ、ひいい!」

  と、身をよじるラナハさん。

「妻帯者の施術(せじゅつ)を見るのは初めてねえ。なんだかドキドキするわ」

  とは、ジュテリアン。

「両足は確保した」

と言ったのは、ぼくの身体(からだ)の下、四本足の間に寝そべっているミトラだ。


「あっ、あっ、ヨンヨン!」

  身悶(みもだ)(あえ)ぐ妻帯者ラナハ。

「ふうん。奥様の名前かしら(ジュテリアン談)」

「あのちっちゃな娘さんの名前かもね(ミトラ談)」

「愛人の名前だったら、興奮するのう(フーコツ談)」


「あうっ、あうっ! ゾランダ!」

「あっ、ついに愛人の名前かっ?!(フーコツ談)」

「初恋の人かも?!(ミトラ談)」

「初恋の人で愛人かも! ああ、ドキドキする!(ジュテリアン談)」

愛人推(ラマンお)しで、上半身をラナハさんの腕に(かぶ)せるフーコツ&ジュテリアン。


「これが妻帯者の(もだ)えなんだ。なんか、新鮮!」

  ラナハさんの両足を抱きしめるミトラ。


「うへっ、うへへっ。マシルダ!」

「おや? 三人目の名が出たぞ?」

ラナハさんの興奮が感染(うつ)ったのか、鼻息を荒くするフーコツ。

「亡くなったと言う母親の名前かしら」

フーコツの興奮が感染したのか、ため息を重くするジュテリアン。


「あひっ、あひっ。祖父の名前です」

  荒々しい息の下、なんとか喋るラナハさん。

「つまらん! つまらんぞ、ラナハ! 愛人はどこじゃっ?!」

  フーコツは自慢 (たぶん)の豊乳をラナハさんの右手に(かぶ)せた。

「ひーー、ひーーー!」

「こら、ラナハ! 逃げるな、しっかり(つか)むのじゃ。そうじゃ、ぎゅぎゅうっとじゃ!」


  そうして、つつがなくラナハさんの施術は終わった。

立てなくなったラナハさんは、蛮行の三人娘が彼の部屋に運んだ。

  ぼくも念の為に付いて行った。


ラナハさんをベッドに寝かせ、シーツを掛けると見せて()し掛かるフーコツ。

「あっ。やめなさい、フーコツ!」

  と言ってやはり伸し掛かるジュテリアン。

「あっ。二人ともずるい!」

と言って二人を()ぎ払いラナハさんに伸し掛かるミトラ。

  チーム名に相応(ふさわ)しい蛮行であった。

念の為に付いて行ったぼくは、その蛮行をしっかりとこの電子眼に焼き付けたのだった。


自分たちの部屋に戻って、初体験であった妻帯者の余韻冷めやらぬまま、ぼくは三人娘の施術に移った。

  こうしていつもの、

「あっふん、あっふん」な夜は、部屋に嬌声を響かせながら、平穏に更けていったのだった。


翌朝、

「やはり、施術の後の目覚めは爽快じゃのう」

  トップレスのまま、窓辺で伸びをするフーコツ。

三人とも元気溌剌(げんきはつらつ)でなによりだ。

テント村では施術は自粛(じしゅつ)したので、気分、体力の回復が気になっていたのだ。


ラナハさんを朝食に誘い、四人と一台で階下の食堂へ歩いてゆく。

  その、ラナハさんの歩き方が妙に擬古(ぎこ)ちない。

昨日の浮気モドキが尾を引いているのだろうか?

  ただの施術と伸し掛かりだったのに。


  蛮行の三人娘の、

「何もなかった感」を見習って欲しいものだ。


四人は同じテーブルで、(なご)やかに美味(おい)しく朝ごはんを食べた。

  ぼくは後ろで潤滑油をチビチビ飲んだ。

「久しぶりに楽しい夜だったわねえ」

「テント村では、我慢してしもうたからのう」

「ラナハさんも、今朝は爽快だったでしょ?」

「は、はい。肩凝りがまったく消えておりました」

  ラナハさんは、そう言って頭を下げた。

ぼく的に「よしよし」であった。


食事の後、お昼用に作ってもらった御弁当(バスケット)を受け取り、ぼくたちはラナハさんと一緒に宿屋を出た。

ラナハさんはこれから買い出しに行くと言うので、お別れである。


フーコツは、ラナハさんから(そつ)なく住所を聞き出していた。

  これで、用ができたら手紙を届けられる。

クカタバーウ砦。アルファンテの討伐ギルド。ユームダイムの討伐ギルドなど、伝達蜥蜴(アビソサウラー)を飛ばせる場所は幾つかあったが、個人宅は初めてだった。


「えっ? どうしたのフーコツ。愛人志望?」

「隠れ家に使えよう? 夜這いも出来よう?」

冗談とも本気ともつかない会話を、ミトラとフーコツが()わしていた。無視するしかなかった。


別れる際に、

「また店に寄って下さい」

と、ラナハさんが律儀な話をしたので、果たしてフーコツは、

「うむ。奥様が留守の時にな」

  と(きわ)どい返事をした。



        次回「ランランカ再再再登場」(後)に続く




お読み下さった方、ありがとうございます。

次回、第百三話「ランランカ再再再登場」後編は、明日の金曜日に投稿予定です。


ランランカとは、主人公(?)をミトラたちの世界に転生させた転生官の名前です。

場違(オー)工芸品(パーツ)に主人公(?)の魂を転移させたのは闇呪術師のミトラです。

はい、おさらいです。自分に対して。

     ではまた、明日。

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