表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/366

「大大大大福虫」(後)

地図で見ると、ピクアナイトは街道をこのまま、目的のアレドロロン方面に進んだ所にあった。


「でっ、では、ご一緒に!(ラナハ談)」

という事になり、今度はミード爺さんの息子さんとの道ゆきになった。


「馬車と一角馬(コーンマー)が買えたら、仕入れもするから、帰りは明日になるよ」

とラナハさんは言い、人の良さそうなミード爺さん、可愛らしい奥さん、こまっしゃくれた顔の娘さんに見送られて、表街道を進んだ。


歩いても歩いても、振り返っても振り返っても、家族が手を振っている姿が見えるので、ラナハさんは、

「照れくさいなあ」

   と、笑った。


布で(くる)んだ剣歯のひとつは、なぜかフーコツが持った。(おび)でくくって背負っている。

もうひとつは、ラナハさんが同じくヒモで背中にくくっていた。


  ラナハさんもフーコツも、

「重いでしょう」

「重いであろう」

  と、言って自分で持ちたがったのだ。

もうすぐ売ってしまうので、別れを惜しんでいるのかも知れない。


ラナハさんは、「将来のために」と、御者(ぎょしゃ)資格を所得していたので、

「帰りは馬車を(あやつ)って帰るから早い」

  と語った。


馬車に追い抜かれ、荷車に追い抜かれ、マイペースで進む「蛮行の雨」とラナハさん。


  雑談にも花が咲いた。

と言うか、間を持たすために、とにかく喋り倒す三人娘であった。


「なんと! クカタバーウ砦で、黒騎士様をお助けしたトンパチ突入隊とは、貴方達の事でしたか?!」

クカタバーウ砦発行の、「爆炎のギューフ軍討伐証明書」を見せなくても、ラナハさんは信用したようだった。


  場つなぎには、丁度(ちょうど)良い話題だと思う。

爆炎のギューフを倒したのはミトラ、ではなく黒騎士様。

ギューフの片目を潰したのも、ジュテリアンではなく黒騎士様。

火吹(フー)大蜥蜴(ヌイサウラー)を二匹倒したのも、ミトラとフーコツではなくて、黒騎士様。

  と言う事にしたが。


そうそう、ヌイサウラーは、(ちまた)の噂に合わせ、ヌイヌイヌイサウラーとして話した。


しかし、砦に突入して北と西の門を開けたのは、「蛮行の雨」だったので、「勇者団」のレベルは上がらなかったが、討伐ポイントはゴルポンドさんに()いで高かった。らしい。


「そうですか。お名前は失礼ながら存知上げませんが、ウチの親父(オヤヂ)なんぞに、こんな(ほどこ)しをして下さって」

  そう言って、剣歯を包んだ背中の布を叩くラナハさん。

「きっと大成なさいますよ、皆さんは」

  と、()めてくれた。


「うん。確かに大成にはまだまだ程遠い!」

  口を一文字に結ぶミトラ。

心強い仲間を得てしまい、テキトーな見聞の後、故郷のオララ集落に帰る話は忘れてしまったっぽい。

  怖いな。大成、考えてんのか、ミトラ。


ピクアナイトへの道半(みちなか)ば、雑木林を背にして、お昼を食べる事になった。

  輪になる四人と、輪の外に立つぼく。


(かた)そうなパンを(かじ)っているラナハさんに、

「どうぞ、この街道のテント村で二人分、(もら)ったので」

  と言って自分の分をひとつ渡すミトラ。


「えっ? そ、それでは貴方(あなた)の分が半分に……」

「大丈夫、こっちの二人に貰うから」

「うぬ。拒否の出来る案件ではないのう」

  などのささやかな会話があった事は流そう。


ところが御弁当(バスケット)のフタを開けて、

「あら、びっくり(ジュテリアン談)」

  中の具が、かなり乱れていた。


「あっ。パレルレ、ヒポポから逃げる時、ごろごろ転んでいたっけ?」

  と、ミトラ。

(いな)! 爆風、爆風!』

  と、サブブレイン。

「そ、そうだよ、卍手裏剣の爆発で吹っ飛ばされて転んだんだよ」


「確か、収納庫には押さえが付いておっだろうが? なんとした事だ」

「スプリングが効かないくらいの衝撃だったんだよ」


「いやでもこれは、混ぜ御飯(ごはん)だと思えば……」

  大盛りのぐちゃぐちゃ弁当を見て(つぶや)くラナハさん。

確かに、ガチガチのパサパサパンよりは美味(おい)しそうだった。

いや、「よりは」と言う発言は失礼だ。


「うんまい!」

ラナハさんは笑顔で、混ぜ御飯大盛り弁当に食いついていた。


「煮物の味が焼き肉と混じって、美味(うま)い!(フーコツ談)」

「焼き魚が(ほぐ)れ、野菜と(まぎ)れて絶品!(ジュテリアン)」

「同感!(ミトラ)」

  と言いながら、蛮行の三人娘も舌鼓(したづつみ)を打った。


  結果オーライとは、この事か?



           次回「ラナハさんの買い物」に続く





お読み下さった方、ありがとうございます。

次回、第百一話「ラナハさんの買い物」前編は、来週の木曜日に投稿予定です。


何事もなく百話が過ぎてよかった。

    と思っているのはワタクシだけか?!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ