「黒騎士近衞団」(後)
ぼくたちは懸賞金を受け取ると、早々に警備隊屯所を出た。
雨は止んでおらず、再び盾を傘代わりに差すぼくら。
「急げば、日没までに、この先にあるテント村に着けよう」
フーコツが地図を広げて言った。
ぼくたちは、雨でぬかるんだ街道を急いだ。
フーコツはまた裾を捲り上げて、ベルトに差している。泥跳ねでローブが汚れるのが嫌なだけである。
テント村に着く頃には、雨は小止みになっていた。
ただ、日没までには着かなかった。
「すつかり日が暮れちゃったじゃないの!」
ミトラはお怒りだった。
「予想は往往にして外れるものじゃ。大事ない」
フーコツは、なにやら達観していた。
テント村の受け付けで、三人用の少し大きなテントを借りるジュテリアン。
ぼくは眠らないので、外で立ち番である。
ようやく雨も止み、三人娘は露天風呂に行った。
もはや夜半と言ってよい時刻で、出歩いている人の姿もあまりない。
しかし、発行石は増光したままで、あちこちに松明のようにして立ててある。
布を掛け調整してあるが、辺りは明るかった。
テント村のテントには床があり、少し高くなっている。雨水の侵入を防いでいるのだ。
テントの防水加工も中々のもの、らしい。
中が濡れている心配がないのなら、それで良い。
晩ごはんは、露天風呂の食堂で食べて来たと言う三人娘。
「テントで『あっふん、あっふん』するのは、周りに誤解を生むだけであろうから(フーコツ談)」と言う事になり、今夜の施術は中止になった。無念だ。
「蛮行の雨」と、ミトラの書いた拙い手書き札の掛かったテントの前で、番をするぽく。
女性たちはもう眠ってしまった。雨の強行軍が効いたのかも知れない。
ぼくらのテントの傍にも、松明状の発行石が置いてある。
布が掛けてあるが、例の超新星爆発効果を調整し損ねたのだろう、少し明るく感じた。
真夜中、訪問者が三人あった。
見るからに「荒くれ者」然とした御面相の、浴衣姿のおっさん三人組だった。
そのうちの一人が自然な動きで、発光石松明に厚い布を掛けて光を閉ざした。
「ここかい? 夜にやって来た美人さん方と言うのは?」
ニヤニヤ笑いでぼくに聞いて来た。
凛凛しく剣呑な美女、ジュテリアン。
妖艶かつ物騒な美女、フーコツ。
そして可憐なロリコン殺しのミトラ。
確かに粒よりの三人娘だが、どこから情報が漏れた?
「お嬢さんたちは眠っておりますので」
ぼくは四本の腕を広げて、荒くれ者の進行を止めた。
「ああ。なんだと? ゴーレムの分際で!」
「そこを退きやがれ!」
喚きながら、二人の荒くれ者がぼくを蹴ってきたが、
「あだだだだだ!」
「いだ、いだだだだだだ!」
当然の如く、大層痛がった。当たり前だ。超硬鋼鉄が人間の力で砕けたら苦労しない。
と言うより、ゴーレムの硬さを知らないのだろう。
「それ、自業自得ですからね」
「なんだと、このポンコツ野郎! 黙って道を開けやがれ!」
『ゴーレムは人間に逆らえない」
と言う間違った認識を持っているようだった。
ひとつ、捻ってやるか?
眠っている女性たちを守るのだ。正当防衛で通るはずである。
そしてぼくは、弱い悪漢には強いのだ。
「なに? どうしたの?」
テントから這い出して来るジュテリアン。
ノーブラの浴衣が肌けていた。
寝相の良い彼女にしては、珍しい事だった。
「うるさいぞ、死にたいのか?」
さらにいつも通り胸元を乱し、後に続いて顔を出すフーコツ。
過激な発言は、単に寝惚けているのだろう。
その彼女たちの肢体に『ごくり』と息を呑む荒くれ三人組。
うん。その気持ちは、同じ男としてとても良く分かる。
でも、指一本、触れさせないけどね。
次回「ヒポポサウラーVS蛮行の雨」(前)に続く
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次回、第九十八話「ヒポポサウラーVS蛮行の雨」前編は、明日の日曜日に投稿予定です。
後編は、祭日の月曜日に投稿予定です。




