「あれこれな三原則」(前)
転生の三原則、ゴーレムの三原則とは、ざっと次のような物であった。
ひとーーつ。
「命名者には服従しなければならないが、克服した場合は、その限りではない」
ひとーーつ。
「人間を殺傷してはならないが、自分を守るためならば、その限りではない」
ひとーーつ。
「非人道的な指示は書き換えて良い」
ひとーーつ。
「自分の命は守らなければならないが、人間を守るためには自爆して良い」
などなどである。
幾つかは、克服しつつある、または克服した気がする。
とりあえず、討伐依頼の掲示板を見に行く事になった。
勇者団登録が済んだので、
「よしっ、勇者団らしい事をするぞっ!」
と言うミトラの一声によるものである。
ランク別の掲示板もあるが、ぼくたちは全ランク用の掲示板を見に行った。
「ああ、近在のローカル魔王の名前、超超級にもあったけど、ここにもあるんだ」
と、掲示板の紙を叩くジュテリアン。
新参魔王ロピュコロス。
隠匿魔王スハイガーン。
老老魔王ドゥクェック、などである。
「無茶苦茶じゃん、この掲示板。下下級、下級チームも対象になるのに」
と、呆れるミトラ。
「名前のチェック用ね。名前知らないと、困る事もあるから。あっ、こいつだ、私が居たチームの勇者を殺した奴。たぶん」
と、討伐依頼書をこつこつ叩くジュテリアン。
「魔王ロピュコロス」の下に、『四天王のひとり・爆炎のギューフ』と書かれていた。
『大斧使い』『爆炎魔法使い』などの記述がある。
「あーー。前に聞いたジュテリアンの説明と一致する」
と、ぼく。
「ふうん。爆炎のギューフかあ。名前には興味なかったからなあ」
首をひねるジュテリアン。
「こいつ、三ペート(三メートル)くらいあって、紫色の肌してるからね」
「四天王のひとり、『鋼のバンガウア』って、猫背で、肩幅が広くて、高身長ってあるけど」
と、近隣魔王軍ロピュコロスの欄を指すミトラ。
「魔族って、だいたいそうじゃん」
「そうね、説明になってないわね」
と、ジュテリアン。
「四天王のひとり、『風のシュクラカンス』に至っては、『大剣使い』のみですね」
と、ぼく。
「四天王のひとり、『雷のガシャス』。『雷撃使い』。名前見りゃ分かるっての」
「『爆炎のギューフ』って情報多いんだ。目立ちたがりなのかな?」
「多分ね。街や村を襲っては、お金や食べ物を盗んで行くそうだし」
「野盗じゃん」
「でも、そうやって物品を差し出せば、命までは取らないそうよ」
「やっぱり野盗じゃん」
「この辺りは魔王ロピュコロスの勢力範囲だから、まだ情報がある方よね」
「『魔王ロピュコロス』。『万丈の杖使い』。なによ、万丈の杖って」
謎が多くて人間の敵って、嫌だなあ。
(こういうのとは、関わり合いにならないに限る)
と、ぼくは激しく思った。
「あっ、『ぼくのギュミュシニャオを探して下さい。行方不明』だって」
ミトラが指したギュミュシニャオの絵は、銀色の体毛で猫そっくりだった。
額に小さな角が一本、生えていたが。
「ギュミュシニャオ探索は、超超級とかには馬鹿馬鹿しくて出来ない依頼かも」
と笑うジュテリアン。
「でも、報酬は良いわね。十万ゴンも貰える」
「くっ。朝に捕まえた野盗三人組の倍もある」
と言って唇を噛むミトラ。
「これなんかどう? 『クカタバーウ砦の伝説の棍棒を抜いて来て下さい。買い取ります』だって」
と、ジュテリアン。
「えーーっと、依頼は『ロガンマ市立博物館。報酬百万ゴン』?。ふざけてんのこれ?!」
ミトラが怒ったような声を出した。
「伝説の宝物を、たった百万ゴンで買い取ろうっての? 棍棒が、いくら人気がないからって、失礼な!」
確かに、銀猫十匹分と同じって、安すぎる気がした。
たぶん、博物館に予算がないんだろうけど。
次回「あれこれな三原則」(後)に続く
次回「あれこれな三原則」後編は、今日中に投稿します。
読まれるためには、早く事件を起こして読者を引っ張る事。
みたいな事が、手引き書にありました。
反して、なんだかノンビリな展開ですが、まだまだノンビリは続くのであった?!
明日の土曜日は、
「ほぐされる仲間」前編、後編。
明後日の日曜日には、
「ハイド・ヌイ・サウラー」前編、後編。
を投稿します。
ハイドヌイサウラーは、火吹き大蜥蜴の事です。
こんなに早く出て来たっけ?
個人的にも待たれる展開だった。




