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「ミトラ、敗れたり!」(後)

「蛮行の皆さん、たまにで良いから、伝達蜥蜴(アビソサウラー)で連絡をくれんか?」

  ロウロイドさんが話題を変えた。


「根無し草同士で、どうやって連絡を取るのじゃ?」

  とフーコツが言うと、ロウロイドさんは、

「まず、長く滞在する宿があったら、そこからクカタバーウ砦に手紙を出すんだ。

『私たち宛の手紙があったら、届けて下さい』

ってな。そこで、(わし)らの手紙があったら、あんたらの宿に届くって仕組みだ」

  と説明した。


「まだるっこしいのう」

  と、「面倒臭い」顔を隠さずにフーコツが言った。

「それ、アビソ便公認の宿でないと無理じゃん」

  と、ミトラが言った。

すべての宿に届くわけではないらしい。


「それで、溜まっている手紙がない場合は、どうなるのじゃ」

  とのフーコツの問いには、

「もちろん、

『お届けする物はありません』

って連絡が届きます」

  と答えるコラーニュさん。

「吾輩らは、クカタバーウ砦と手紙のやり取りをしています。魔王軍にスパイとして侵入しているムンヌルさんが、おりを見てバンガウアさんに魔族の動向を書いた手紙を渡しているのです」


後を受けて、

「で、そのムンヌル情報を、バンガウアさんが街や村に出て、クカタバーウ砦にアビソ便で知らせるのだ」

  とゴルポンドさん。

「砦がムンヌル情報を受け取り、なお吾輩らの所在が分かっておれば、砦は吾輩らに手紙を届けてくれるのです」

  と言ったのはコラーニュさんだ。

「説明は以上です?」

  と締めるギュネーさん。


「長い。説明が長い。最初の方、忘れちゃった」

  と、ミトラが白状した。

ミトラのその言葉を無視して、

「儂の『謎の黒騎士拡散計画』と、フーコツさんの『ロピュコロス軍壊滅計画』は、姉妹編的な謀略ですからな」

  と、ロイロイドさんが言った。

「ようするに、クカタバーウに連絡する事によって、情報交換が出来るのですよ」


「クカタバーウネットワークだよ」

  と、ゴルポンドさん。


「分かりました。クカタバーウに近状報告を、するようにします。そしてその手紙に『引き潮の海』にも送るように、書き()えておきます」

  ジュテリアンが相談なしに宣言した。

そして「蛮行の雨」は、誰も異議を(とな)えなかった。


「オレは、

『黒騎士を連れてラファームに帰る』

って、アビソ便を飛ばしたわよ。もちろん、討伐団に入った事も書いたわ」

  と、ギュネーさん。

「筆マメじゃのう」

  感心するフーコツ。


「今回、オレらはユームダイムに長く逗留(とうりゅう)したので、ムンヌルさんの手紙をクカタバーウから送ってもらえたんだ」

  と、ゴルポンドさん。

「そこには、ロピュコロス魔王軍の一人、(トリニトス)のガシャスを、

奸計(かんけい)にて()としめておる(ゆえ)、遠からずそれなりの成果が()ずるやも知れぬ』

  と、あったよ」


「その成果が、今回のユームダイム強襲だろ? 目的は伝説の杖だったらしいが、そこまでは書いてなかった」

  コラーニュさんはそう言って苦笑を見せた。

「たまたま、ユームダイムに居ただけだよ、吾輩らは」


「うむ。ムンヌル殿の策略に(はま)ったガシャスが、追い詰められ苦しまぎれに今回の暴挙に出たと、バンガウア殿が言っておられた」

  と、フーコツ。


「そういう事のようだな」

  と、ゴルポンドさん。

「今日、食事でもしながら、お主らにも知らせようと思っていたのだが、ガシャスの行動が早かった。しかもガシャスの野郎、もう死んじまったしな」


「ガシャスの暴走だが、追い詰めたのはムンヌル殿だ」

  と、ロウロイドさん。

「ユームダイムに知らせておくか?」


「そんな事をユームダイムに知らせたら、ムンヌルさんを押さえに掛からない?」

  と、ジュテリアン。

「私たちは私たちの方法で計画を進めましょう。その上で必要とあらば、軍なども利用するのです」


「今回、ワシらがハーン公園で市に利用されたようにじゃな」

  とフーコツが言った。


「そうよ。市は警備隊の欠損を恐れ、岩石竜(ロックドラゴーラ)の相手を私たちに丸投げしたじゃないの」

  ジュテリアンは(けわ)しい顔でそう言ったが、

「まあ、あれで良いとも思うけど。私だって、公務員側だったら、行きずりの無頼漢を利用するわ」

  と、付け足した。


「そうじゃな。ワシらも場合によっては、軍隊や警備隊を利用させてもらおう」

  と、フーコツ。


それはつまり、軍や警備隊の命を利用して、目的を達成すると言う事ではないのか?

無頼漢らしい言葉だが、もしそう言う場面になった時、ぼくは「蛮行の雨」を止められるのか?

止めると言う事は、自分たちの死の確率が猛烈に上がると言う事なのだが、その覚悟があるのか、ぼくに。

(ええっと、先伸ばしにしよう)

  ぼくは心の中で、とっとと逃げた。


「どうした、ロウロイド。暗い顔をして」 

  と、ゴルポンドさんが言った。

「う。まあ、最近まで公立砦の隊長をやっていたのでな」

  と、答えるロウロイドさん。


「でも、ロウロイドさんは民間人のあたしたちに、

『手を出すな』

って叫んでいたじゃん」


「ロウロイド殿、昔を思い出せ。メリオーレス殿に聞いておるぞ」

  と、フーコツ。

「荒くれ者で、ゴロツキで、ならず者で、あぶれ者で、無頼漢で、時には凶漢だったそうではないか」


「ははっ。まさに今のオレらはその通り。すべての形容が当てはまるな」

ゴルポンドさんは屈託なく笑い、ロウロイドさんの肩を抱いた。



       次回「バンガウアVS女性連合」(前)に続く




お読み下さった方、ありがとうございます。

次回「バンガウアVS女性連合」前編は、明日の土曜日に投稿します。

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