「黒騎士近衞団!」(前)
「魔族、いえ野盗にでも、遺跡屋が乗っ取られたら危なくないですか?」
ギュネーさんがもっともな心配を口にした。
「勿論じゃ。そもそも老老魔王ドゥクェックは、デウデトラ国の遺跡屋を狙ったのだからな」
と、応じるフーコツ。
「ええっ?!」
「な、なんだって?!」
などと驚く「蛮行の雨」「引き潮の海」。
「情報源ばどこだ?」
と、喚くロウロイドさん。
「遺跡屋襲撃の目的がバレると、店の付近の守りが堅くなるからのう、そこは内緒にして攻めた」
からの、
「しかし、デウデトラ国は遺跡屋の全面協力を得て、魔族の撃退に成功し」
からの、
「ドゥクェック軍は大きな痛手を負ったが、魔王は自分の考えが間違っていなかった事を知ったのじゃ」
からの、
「げに恐ろしきは遺跡屋だ。とな」
からの、
「そしてドゥクェックは、
『二度と遺跡屋のある街は襲うまい』と心に誓ったのじゃった……」
しばしの沈黙の後、
「終わりですか? フーコツさん」
と、ロウロイドさんがたずねた。
「デウデトラ国の遺跡屋の顛末は以上じゃ」
「いや、今の話じゃ、襲われた街がどうと言うより、老老魔王の方が大問題じゃないですか!」
と、ジュテリアン。
「まるで自分がドゥクェックのような口ぶりでしたよ、フーコツさん」
と、コラーニュさん。
「そっ、それは言葉の綾じゃ。ワシにはそのう、今のバンガウア殿のような立場の知り合いがドゥクェック軍におったので、その者から教えてもらったのじゃ」
「秘密諜報部員?!」
と、大きな声を出すミトラ。
「極秘隠密?!」
と、コラーニュさん。
「そう、それじゃ!」
ばっ、と表情を明るくするフーコツ。
「遺跡屋の乗っ取りは、遺跡屋も街も、いや、国も充分に警戒しているだろう」
と、ゴルポンドさんが言った。
「そうね。民間人にしては眼光の鋭い人が何人も、遺跡屋周辺のカフェや店先にいたから」
と、ギュネーさん。
「あっ。あの人たち、遺跡屋の見張り? 気のせいじゃなかったんだ」
と、ミトラ。
「ワシなら、遺跡屋のあんな胡乱な子孫なぞ、犯罪をでっち上げて投獄し、店の商品を没収してやるがのう」
フーコツのその物騒な言葉に、コラーニュさんが、
「まだまだ大勇者サブロー様への配慮と敬愛が生きていると言う事ですよ」
と反応した。
こうして、サブプレイン言うところの、
「人間似のナニか」なフーコツさんの、魔王ドゥクェック絡みの危ない発言はウヤムヤになった。
夜の祝勝会にはまだ間があるので、「引き潮の海」は、
「ハーン公園の様子を見に行く」
と言って、ぼくらと別れた。
新入りのギュネーさんも付いて行った。
「今、ハーン公園に行ったら、あたしたちが戦いで荒らしまくった跡を片付けなきゃいけなくならない?」
と、ミトラ。
「だから、後片付けを手伝いに行ったんでしょ?」
と、ジュテリアン。
「あ、あたしたちは手伝わなくて良いのかな?」
面倒臭いの嫌々オーラ、を垂れ流しながらミトラが言った。
「ワシらが手伝ったら、警備隊やゴルポンドたちが恐縮するであろうよ」
フーコツが断言した。
「たとえばワシが実力不足で、戦いをただ見ていたとしよう。我が身の不甲斐なさを振り払うように戦場を片付けておるわけじゃ」
と、話し出すフーコツ。
「そこに、敵を倒した『英雄』が現れ、
『わたしも手伝います』などと言われてみよ。
恐縮至極。感謝千万。恐れ入り谷の大魔王じゃ。
片付け隊は、いたたまれなくなろうぞ」
「あーー。
『見ていただけ』繋がりで、ゴルポンドさんたち、警備隊を手伝いに行ったんだ」
ポン! と手を打つミトラ。
「『見ていただけ』に罪悪感を覚え、今まで悶悶と葛藤しておったのじゃろう」
と、フーコツ。体験談か?
「ああ。オララ工房集落を魔獣なんかから守る時、自分がまだ若輩で役に立たなくて」
ミトラがしんみりと語り始めた。
「守護ゴーレムの活躍を見守っていた後なんか、ガムシャラに後片付けを手伝ったわ。あれね」
ぼくたちはそれから、ラファームの護符屋へは行かないので、このユームダイムで強化護符を買う事にした。
有名所を通行人に聞いて行ってみると、店構えも大きく、期待させた。
ぼくたちが入店すると、カウンターテーブルに頬杖をついていた店主らしき人は、
「これはこれは」と言って立ち上がった。
メタルゴーレムの身体と黒マントのお陰で、ぼくたちの正体がすぐに分かったのだろう。
噂の流れは早い。
今日、魔族を撃退した黒騎士の仲間だと。
次回「黒騎士近衞団!」(後)に続く
次回、第八十五話
「黒騎士 近衞団!」後編は、
明日の金曜日に投稿します。 ではまた明日。




