「荒くれ仲間!」(前)
「それでそのう、その人間みたいな喋り方をするゴーレムさんは、一体何者なんですかい?」
恐る恐る、という感じでアゴ髭が聞いてきたので、
「彼、パレルレは、我が『蛮行の雨』のリーダーよ」
と、胸を張って答えるミトラ。
チーム名『蛮行の雨』に続いて、ぼくが「リーダー」というのもまた初耳だった。
「えっ、それって勇者団? 討伐団?」
少し高い声を出すジュテリアンさん。
「まだどちらでもない」
またも胸を張るミトラ。
(何も考えてないだけだ)
と、ぼくは思った。
「ゴーレム、さんが、なんでリーダーなんですかい?」
アゴ髭のない方が、もっともな疑問を口にした。
それは、ぼくも知りたいところだ。
「ふへん。彼が異世界からの転生者だからよ」
三度胸を張り、ついには天を仰ぐミトラ。
「転生者の魂がナーファ古戦場を彷徨っていたので、大勇者の子孫であるあたしが呪術職能者の技術を用いて、金属場違い工芸品に魂を定着させたのよ!」
「転生者……」
と、つぶやくジュテリアンさん。
「じゃあ、本物の勇者予備軍じゃないの、そのゴー……、パレルレさん」
「そうよ。大勇者の子孫たるあたしと、勇者予備軍のメタルゴーレムが組んだチームなのよ、『蛮行の雨』は!」
「えーーっと、そのう、私も『蛮行』に入っても良い?」
と乗ってくるジュテリアンさん。
亡き勇者の仇討ちを考えていないんだったら、大歓迎だ。
「それとも、どこかで他のメンバーが待っていらっしゃるのかしら?」
「二人だけですよ、僧侶ジュテリアンさん。大歓迎です!」
ミトラは満面に笑みを露出させて言った。
ぼくたちのチーム話に興味がないのだろう、アゴ髭のない方が更に、
「そのメタルオーパーツさんは、大魔王デスラモゴラと戦ったと言う、古代ムン帝国の戦士って事ですかい?」
と聞いていきた。
「ナーファ古戦場に埋もれていたんだから、間違いないわよ。ねえ、パレルレ」
「その点は間違いないけど、本懐を遂げる前に戦死した残念兵ですよ」
「勇者のタマゴたる転生者が、古代ムン帝国のゴーレム兵を装備したのかい?」
アゴ髭が呻いた。
「もう、オレたちゃ失業するしかないなぁ」
「ゴロツキもナラズ者も、正業じゃないだろ!」
ジュテリアンさんが鋭い声を出した。
「ふざけた事を言ってると、あちこちヘシ折って引きずって行くわよ!」
「おお怖い」などと言う軽口は言わず、黙り込むナラズ者たち。
「文化的遺産的価値はともかく、頑丈で素早くて、前衛に持ってこいなのよ」
と、ミトラ。
「今じゃ頼もしい仲間で友だちよ」
「じゃあ、私も仲友で」
街で出会った知人をお茶に誘うような軽さで、ジュテリアンさんが言った。
「よろしくね、ミトラさん。パレルレさん」
「『さん』、は無しにしよう」
ミトラがすかさず言った。
「荒くれ仲間らしく呼び捨てで!」
「そうか。『蛮行の雨』だったわね」
ジュテリアンさんは変なところで納得したようだった。
チームに回復役は必至。まずはめでたい。
ぼくのような機械の身体の回復は無理だろうけど、探せば機械部品を扱うガラクタ屋があるかも知れない。
次回「荒くれ仲間」(後)に続く
次回「荒くれ仲間」後編は、夕方5時頃に投稿予定です。
明日は、第八話「『蛮行の雨』、登録せり!」前編、後編を、午前と午後に投稿予定です。
随時、加筆、修正をしておりますので、
「こんな事、言ってたっけ?」とか、
「そんな設定だったっけ?」と言う場面があるかも知れません。
申し訳ありません。
足りないと思ったら、書き加え、要らなかったと思ったら、削ったりしています。
第一部が完結している、
回文妖術師と古書の物語「魔人ビキラ」
回文ショートショート童話「のほほん」も、よろしくお願いします。よかったら、読んでみて下さい。
ほなまた、明日。




