「仮面の盗賊団」(後)
「あっ、ギュネーさんが股をおっ開げたわ。せっかくだから、ここもお願い、パレルレ」
と言ってさらに太股を開げるミトラ。
「ギュネーさんは「違う違う」と言うように頭を振るが、フーコツがガッポリと唇を塞いでいるので声が出せない。
やがて接吻に飽きたのか、かぱっ! と音を立ててフーコツが唇を離した。
「おおお、お前たちの強さの秘密を見破ったぞ」
そう呟いて、ギュネーさんは失神した。
ピンクのタオルで、ソッとギュネーさんの鼻水とヨダレを拭き取るフーコツ。
「わ、わわわ私もあんな顔して悶えてるの?」
出てもいないヨダレを拭うジュテリアン。
「どんまい。あたしも多分、同じ顔してるから」
と、ミトラが慰めた。
その後も、いつもより多い女性を相手にぼくは奮闘した。
ぼくがもし人間だったら、先にとっとと力尽きていただろう。
金属場違い工芸品に転魂してくれたミトラに感謝しながら、特に彼女を念入りに揉みしだいた。
ミトラは最後だったせいか、彼女はいつもより、
「やっ、いや! あっ、あっ!」
「あうっ。あふん、あふふん」
と可愛い声を出して悶え狂った。
念を込めたのは、ぼくのほんの気持ちである。
翌朝、
「くああーーっ、こういう事かあ!」
伸びをして、二階の窓から朝焼けに叫ぶギュネーさん。
「気分爽快、勇気凛凛だあ!」
(うんうん。そう言う事だよ、ギュネーくん)
浴衣の下の、ノーブラで揺れるギュネーさんの胸を見て、内心ホッとするぼくだった。
その後、数日は何事もなく旅はゆき過ぎて、ギュネーさんが退屈し始めた頃、街道で野盗に出会った。
野原でお弁当を食べている所へ、何処からともなくワラワラと現れて来たのだ。
少し変わった野盗で、
「そのメタルゴーレムを置いて行けば何もしない」
と言った。
頭領は、中年オヤジの仮面を被っていて顔は分からなかったが、長い純白の髪をなびかせ、白色のワンピースを着ていた。
ワンピースの長袖から出ている手も白く、沢山の指輪が光っている。
頭部から出た二本の触角が不安そうにプラプラ揺れている。
自分の背丈よりも長い、純白の杖を携えている。
(あれで暴露てないつもりか、転生官ランランカ)
(『不思議思考女ランランカ』)
蛮行の三人娘も、苦笑いをしていた。
「ランランカ様、コイツら言う事を聞きませんぜ」
「ばっ、馬鹿っ! 頭領とお呼び、ハンゾー」
転生官ランランカは、慌てた様子で言った。
「あっ、申し訳ありません。頭領のランランカ様」
「また転生の女神が出た。懲りない人ねえ」
とミトラ。
「職務に忠実な人なのねえ。見習わなくちゃ」
つい最近、転生官との一悶着を聞いたばかりのメリオーレスさんは感心した。
さすがは公僕、ギルドの受け付け嬢である。
「何者なんですか? なんならオレが壊してきましょうか? 先生」
と、フーコツにお伺いを立てるギュネーさん。
「ああ、そうね。ユームダイムも目の前だし、面倒だから追っ払って頂戴、ギュネー」
フーコツのその指示に、
「合点だ!」
と叫んで七人の黒装束に襲い掛かるギュネーさん。
黒装束たちも、
「忍法雨降らし!」
「忍法肩透かし!」
「忍法猫ダマシ!」
「忍法岩隠れ!」
「忍法十字手裏剣!」
「あっ、やめろ馬鹿! 仲間に当たる」
などで応戦した。
「忍法電撃竜巻き!」
「だから仲間に当たるって言ってるでしょ! サンダユー」
ランランカに叩き倒される肥満体忍者。
「それなりの攻撃力もあるようだけど、密集し過ぎたようね」
と、メリオーレスさん。
黒装束たちは、毎夜ぼくの施術に悶えて来たギュネーさんの敵ではなかった。
千切っては投げ、丸めては投げ、ギュネーさんは黒装束たちを蹴散らした。
次回「くノ一、アヤメ」(前)に続く
お読みくださった方、ありがとうございます。
「蛮行の雨」は、また来週の木曜日〜日曜日に掛けて。
第六十五話「くノ一アヤメ」前編、後編。
第六十六話「ユームダイム」前編、後編。
を投稿します。




